写真家であり日本文化好きのDaleは、素晴らしい写真作品は“HAIKU”である,と言う。
一瞬をつかみ取り、余す所無く表現し、また永遠であるという。
文化全般にうとい私は、彼より少し身近なはず(日本人だから)の『俳句』からそぎ落とされた行間が、 一瞬の状況が普遍的なものとして、人の心により深い臨場感を呼び起こすものと感じている。
私たちにとって“HAIKU”は、表現についてディスカッションする際、お気に入りのテーマの一つである。
Traces3
112x76cm キャンバス、フォトプリント
今回“Traces”-痕跡 というテーマで、写真を媒体にした,初の共同制作展を、ギャラリーミリュウで発表させていただく事になった。“HAIKU”は、夫婦とはいえ全く異なる表現思考を持つ2人の人間をつなぐキーワードとなった。
この夏私たちが旅をした、アリゾナの砂漠地帯の乾いた岩山、延々と続くかと思われる平坦な荒野、ごくたまに動くものは風に転がるTumbleweedと呼ばれる根の無い灌木であり、そこを時間の感覚を狂わすほど走り続ける。夜明け前にたどり着いた、大峡谷の狭間にできた奇跡のような砂丘陵コーラルデザードで、夏とは思えない寒さの中、静寂と滑らかな砂に足を埋め、奥地へと歩く。
日の出のほんの一時の光を待ち、デールは彼の“HAIKU”に近づこうと集中し、私は五感をその場に拡散させていった。風の創った甘美な“Traces”も、砂丘スポーツを楽しむライダーたちの残した 反対の丘陵の“Traces”も、不思議な文様を描いて、朝日に映えていた。
旅程の中、石ころから壮大な風景、雷光、雲、そして、砂漠に立つ人工のグロテスクな牙城ラスベガスのイルミネーションをカメラに納め、帰路に私たちがひた走った荒野を上空からとらえた。
キャンバスの作品は、やはり印象深かったコーラルデザードと荒野に映る雲、大峡谷を、あえて、色彩や写真的細密さ(?)の要素を極限までそぎ落とし、薄いグレーの点の集積に変換し、集中力でとらえたデールの“HAIKU”と、五感の拡散によってとらえた私の『俳句』を一つとなした。
また、アクリル筒を使ったライティングボックスは、この旅に限らず、私たちが撮りためたイメージを管の中、融合させ、新たなイメージを作り出す楽しさに興じた、いわば連句である。
契約
高さ170mm径75mm 壁掛けタイプ
アクリルパイプ、フォトプリント、一部ピグメント、蛍光灯
¥80,000-
この展覧会に足を運んでくださった人たちが、小さな光の筒の中の情景へ、粒子の集積としてある風景へ、少し現実の時間を止めて旅をしていただければ幸いである。
藤浪理恵子
トレース I
132x91cm キャンバス、フォトプリント
¥400,000-
トレース II
132x91cm キャンバス、フォトプリント
¥400,000-
追憶
高さ170mm径75mm 壁掛けタイプ
アクリルパイプ、フォトプリント、一部ピグメント、蛍光灯
¥80,000-
ギャラリーミリュウ
東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビル3F
TEL:03-5537-8733