「鯉江さんは、存在そのものに価値があるのです」と、ある人が語ったという。
今年、七十歳を迎える鯉江良二先生。しばらく、芸大教授の時代には、作陶への執心よりも、後進の指導への献身に力を注いでいた。
退官後、再び作陶を始めた鯉江は、陶土を求めて世界をも飛び回るようになり、また、身近な所での陶土の発見も繰り返す。
象嵌壷・韓国手 (W26.5×H34.6)
韓国で制作された象嵌壷は、表面の派手なアクションとハプニングに目を奪われますが、そのフォルムに注目すれば、膨らみと柔らかな曲線が美しい。肩のラインも自然でさりげない。
引き出し灰釉茶碗 (W15.6×H10.8)
異彩を放つ装飾が嫌味にならないのは、基本の形ができているからで、これが鯉江の魅力の一つである。鯉江は、他の陶芸家と比すれば異色である。何が異色かをあげていこうとすれば、きりが無い。
加守田・八木を最後に、芸術を謳いメッセージを発する陶芸家が鯉江良二独りになってしまったのは、存在そのものへの価値と結び付けられる。
灰釉壷・韓国手 (W39.8×H40.2)
45歳の鯉江に初めて出会ってから四半世紀。あの時に見た、怖いような目の輝きが今も変わらない。
「良い土を見つけた」と肩を持ち上げ喜ぶ少年のような姿も変わらない。白髪をたくわえてますます、血気盛ん。鯉江の炎は、灼熱してきた。
黒田佳雄
銀座 黒田陶苑
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