「A Saucer」会場風景 2007年1月 Space Kobo & Tomo
素材:オイルスティック、オイルパステル 撮影:柳場 大
佐藤万絵子は展示会場の空間全体を絵画の空間として捉え、紙にオイルスティックによって描きながら会場制作を行っていきます。
作家は描かれる紙と一体化したかのようにからだ全体を使い目線を紙の表面に近づけて描くことで、なるべく絵の面に一番近いところ、「絵のなか」(絵の描かれている画紙表面の内側)と「絵のそと」(私たちが絵を見ている場所:画紙表面の外側)との境に立つこところから見える景色を創り出していきます。
五感を使いながら創る行為─薄い紙に描く音、筆圧で紙が裂けてしまう音、ひく描線の紙を傷つける音など、耳を澄まし絵と対話しながら「絵のなか」と「絵のそと」を行き来しながら描いていきます。
「人(自身)の寿命はあと数十年、しかし絵は何百年も生きていく」と語る作家は、人のもつ時間のスピードにあわせ意図的に描く行為を抑えながら、その永い絵が息づく時間にあわせて描いているのです。
「A Saucer」より1 2007年1月 Space Kobo & Tomo
素材:オイルスティック、オイルパステル 撮影:柳場 大
作家の創る一見無造作につくられた絵画空間──描かれる色、角のように飛び出す紙のかたち、使われる素材など、ギャラリーに創られていく要素はすべて意味をもっています。
例えば、オイルスティックは作家が絵のなかに入る媒体、ショッピングバッグの紙袋は「絵のそと」側(外界の空気を受けているもの)、無造作に置かれる木片は絵の枠(絵画の木枠)など、絵のもつ要素の象徴として論理的に構築されて具現化しています。
本展は、初日より10日間程かけて会場制作し(但し、制作はギャラリーオープン時間外)、インスタレーションとして完成されます。
アトリエより 2007年12月
まっさらな白い空間から溢れる力で描かれた、一見不可思議に構成され日々変化する抽象的空間に触れたとき、目にしたことのない鮮烈な印象を与えてくれます。
それはダイナミックでありながら(静謐で)、作家の絵に対する最大限の敬意を払う行為なのです。
独自の活動を続ける佐藤の創造的な取り組みは、絵画のもつ根源的なところ──絵画とはどういうものなのか、を立ち戻らせ観る者に新たな想像を掻きたててくれるでしょう。
ARATANIURANO(アラタニウラノ)
http://www.arataniurano.com
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
TEL:03-3555-0696