長尾和典展 Kazunori NAGAO
2007年12月3日(月) - 12月15日(土) 11:00 - 18:30 日曜休廊
アートギャラリー閑々居
「32#9」 1303x1940mm 和紙・墨・木製パネル
自作の前で「風景を見ても、人を見ても、こういう風なんです。」と不可解なことを長尾和典がボソっと言った。
その時の彼の言い方に、「リアルに」というニュアンスが感じられて、ずっと気になっている。
印象とかイメージとか言っているのではないのだから。
話はパッと跳ぶ。
北條は今、金庸(現代中国の武道小説作家)の「書剣恩仇録」というのを読んでいる。
とにかく超絶技の激闘、死闘が10ページごとに繰り広げられて、眼が回りそうなシロモノ。
闘いの場面を紹介したいが、長くなるのと外字が多い技の名前で煩雑を極めるのでやめておく。
中に、ちょうど良い、興味深いがまったく理解できない会話があったのでそこを紹介しよう。
イイモンとワルモンが、シミュレーションで闘う(話闘とでもいうか)という場面。
善: ― 右は「明夷」に進み、「期門」を取る。
悪: ― 「中孚」に退き、鳳眼手ではずす。
善: ― 「既済」に進み、「環跳」を突きながら、左掌で「曲垣」を押す。
悪: 暫く口ごもり
― 斜め「小畜」に進んで、胴を守ると見せる。
善: ― その手はいかん。ヌシの負けじゃ。
という展開なのだが、専門用語でまったく判らない。
激しい技が行き交っているらしい。
それでも読ませてしまう
文章力は驚異なのだが。
「32#11」 910x300mm
そこで、話はパっと戻る。
長尾和典の作品には、同じようなヤッタリトッタリが見える。
作品によって緩急様々だが、ある場面のエネルギーのドラマが表出している。
32#11などは、左手前から右奥へ鋭く走る力、それを受止めるモノ。
受止めて右下に膨らみ、左へジワジワと進む気配。
同じ場には、視線や声が交錯して、ドラマが成立している。
そんな見方もできる。
嗚呼、なんでもすぐに影響される北條である。
アートギャラリー閑々居
東京都港区新橋1-8-4 丸忠ビル5F
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