聴覚の体験は、ただ音を聞くだけではなく、視覚では捉えきれない日常の潜在的な世界を垣間見せる。
音を通して制作を行っていると自然に哲学的な世界へと 誘われる。
「SILENT et LISTEN」は、聴覚を通して生まれてきた、哲学的な世界への関心をオブジェ化した作品で構成される。
藤本由紀夫
DELETE COMPLETELY-2 2007, Long-playing record, 30x30cm
「音」と「言葉」という従来の視覚芸術からはみ出すような要素によって成立する、藤本ワールドに相応しいこの展覧会タイトル「SILENT et LISTEN」は、マルセル・デュシャンのメモに由来します。
アナグラム(言葉を構成する文字の並び替え)によって「静」と「聴」が知的にさりげなく響きあっています。
「静かであること」を「聴く」ことが、見えないものを想像するための糸口となるかもしれません。
作家は1950年名古屋生まれ。1975年、大阪芸術大学音楽学科を卒業。
電子工学を利用した音楽活動を経て、80年代半ばより音と聴覚の関係を巡る考察を軸に身の回りのものや音そのものを用いた作品を制作、発表するサウンド・アーティストとしての活動を開始。
人間の知覚と認識をめぐる具体的な体験の場を提供する作品も数多く発表し、他に類をみないオリジナリティのあるアプローチと発表形態で知られています。
2001 年ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館代表としての参加に続き、2007年には国際部門にて出品。国際的評価を確立させました。
国内では1997年から一年に一日だけ開催する展覧会「美術館の遠足」を2006年までの10年間、企画・運営し、鑑賞者のみならず美術館運営側にも新しい表現活動のあり方を提案し話題になりました。
2007年には広島市現代美術館での個展をはじめ、西宮市大谷記念美術館、国立国際美術館、和歌山県立近代美術館の3館で個展を同時開催。
3館それぞれにテーマを設定した展示は、一言では言い表せられない藤本の作品世界を横断的に見せながら、観るものを魅了させました。
関東では3年ぶりになる待望の個展を、この機会にご高覧下さい。
SHUGOARTS シュウゴアーツ
東京都江東区清澄1-3-2, 5階
Tel:03-5621-6434
東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄大江戸線 「清澄白河駅」A3番出口から徒歩7分