http://www.gallerykoyanagi.com/
野口は今まで一貫して、人の存在、その在り方、そしてそれらを取り巻く未知の世界を主題に写真作品を発表してきました。
撮影の際に積極的にシチュエーションを作り込むことはほとんど無く、自分の中にわいてきた疑問や謎をシンプルに追究していく過程が、そのまま作品に結びついていきます。
彼女の作品に一貫して流れている独特の空気は、個々の奥底の記憶をたどる様な不思議な感覚で、観るものの心にじんわりと語りかけてきます。
2004年の原美術館での個展以来、日本では3年ぶりの個展となる本展では、ベルリンで制作した新作「マラブ」のシリーズを中心に、2005年から2006年にかけて制作した「太陽」のシリーズと他数点の新作を発表します。
マラブ Marabu
2005、c-print
Courtesy of the artist and Gallery Koyanagi
「マラブ」は、一つのものを見つめ続けることについての作品です。
「太陽」は、太陽の色を撮影しようとした作品です。 野口里佳
ピンホールカメラで撮影されたこの2つシリーズは、野口がこれまで発表してきた作品群とは明らかに異なるアプローチがなされています。
レンズもファインダーもない原初的な仕組みのピンホールカメラ。その被写体として野口が選んだものは、ベルリンの動物園で出会った、ほとんど動くことのない鳥「マラブ」と、光の源となっている「太陽」の姿でした。
もはやフィルムで写真を撮ること自体が少なくなりつつある今、野口は原初的なカメラを使うことによって、写真とは何か、という根源的な問題に正面から向き合おうとしているように見えます。
野口が写しとろうとしたその被写体は、果たしてどんな景色として浮かび上がってくるのでしょうか。
今回の展覧会は、これまで発表してきた作品から更なる一歩を踏み出し始めた野口の新たな世界をお見せする、またとない機会になるでしょう。
なお、今回の展覧会ではこの2つのシリーズに加え、2005年に発表された作品「白い紙」も展示をします。これは印刷によって白い紙をより白くすることを試みた作品です。
【野口里佳プロフィール】
野口里佳は1971年、埼玉県生まれ。1992年に写真作品の制作を始めて以来、国内外で主に展覧会を中心に活動し、高い評価を得てきました。2004年よりベルリンを拠点に活躍しています。
主な個展に「MIMOCA'S EYE VOL.1野口里佳展 予感 」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2001)、「飛ぶ夢を見た」(原美術館、2004)、「Color of the Planet」(DAAD Gallery、ベルリン、2006)ほか。また最近では「夏への扉-マイクロポップの時代」(水戸芸術館、2007)や「Sharjah Biennial 8」(アラブ首長国連邦、2007)など、注目度の高いグループ展、国際展に数多く参加しています。
「キャノン写真新世紀」年間グランプリ(1996)、第52回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2002)ほか受賞。著書に『鳥を見る』(P3 art and environment 2001)、『この星』(原美術館/IKON Gallery 2004)『In-Between 13 野口里佳 チェコ、キプロス』(EU・ジャパンフェスト日本委員会)など。
また今後の予定には、ソウルのMongin Art Centeで個展「The Sun」(2007 10/2 -11/11)、ミネアポリスのウォーカー・アート・センターにてグループ展「Brave New Worlds」(2007 10/4- 2008 2/17)などがあります。
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 8F
Tel:03-3561-1896