SKIN+BONES スキン+ボーンズ ― 1980年代以降の建築とファッション
2007年6月6日(水) - 8月13日(月)
10:00 - 18:00(金曜 - 20:00/入館は閉館の30分前まで)
火曜休館
国立新美術館
これまであまり接点がないと見られていた建築とファッション。
1980年代以降、コンピュータをはじめとする様々な技術の革新が自由な造形を可能とし、表面と構造の関係に変化をもたらしたことで、互いの距離を縮め刺激しあっています。
ファッションデザイナーたちは、布を用いて、構築的で複雑な衣服を作り始め、また建築の分野では、仕立ての技術に通ずる、より複雑なフォルムを生み出しています。
国立新美術館では、近年の建築とファッションの動向を紹介する「スキン+ボーンズ─1980年代以降の建築とファッション」展を開催。
これらの分野で活躍のめざましい日本人作家を含む21カ国約40名の作品、230点余りを紹介します。
フセイン・チャラヤン
《アフターワーズ》コレクション 2000-01年秋冬
Hussein Chalayan, Afterwords collection (Fall/Winter 2000)
Photo (c) Chris Moore
Courtesy of Hussein Chalayan Collection Musee d'Art Moderne Grand-Duc Jean, MUDAM, Luxembourg
本展覧会は、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)で開催されたものを、国立新美術館が日本向けにアレンジ。
これまでにも建築の展覧会、ファッションの展覧会はありましたが、建築とファッションを同時に取り上げ、それらの共通性をテーマにした展覧会は前例もなく斬新な企画展です。
1980年代以降の建築とファッションの主だった流れが紹介され、現在最先端で活躍する建築家が手がけたプロジェクトの模型、写真、イメージや、ファッションデザイナーの実際の作品など230点余りを展示。写真でしか見ることの出来なかった作品も、この機会にご覧いただけるかもしれません。
建築とファッションの動きが気になる人はもちろんのこと、これまで全く興味がなかった人も、最近の建築とファッションの特徴を掴めば、新たな好奇心が芽生えることでしょう。
また、現代の建築とファッションの両分野において、日本人の活躍はめざましいものです。世界的な潮流の中で日本人のデザイナー、建築家たちがどのような作品を手がけ、どのような位置を占めているのか、この機会に、お目当てのデザイナー、建築家の作品をぜひご覧ください。
■本展覧会では、概念、形態、構成、技法などを切り口に、建築とファッションに共通する特徴を視覚的に検証していきます。
【I. 共通の概念】
●シェルター
●アイデンティティー
太古の昔から、建築と衣服は、人間の身体を守るシェルターとしての保護機能を共有しています。
また同時に両者は、政治的、宗教的あるいは文化的なアイデンティティーや個性の表象としての機能も兼ね備えています。この二つのセクションでは、両者の根源的な類似点が現代の建築および衣服ではどのように表現されているのかについて検証します。
坂茂の《カーテンウォールの家》(1995年)、フセイン・チャラヤンの《アフターワーズ》コレクション(2000-01年)、ヨーリー・テンのドスキンで縁取りしたフード付ケープ(1982-83年秋冬)、ヴィクター&ロルフ《ロシアン・ドール》オートクチュールコレクション(1999-2000年)などを展示します。
ヨーリー・テン
ドスキンで縁取りしたフード付ケープ
1982-83年秋冬
Hooded Cape with Doeskin Piping from Collection Autumn/Winter, 1982-1983
By Yeohlee Teng, YEOHLEE
●創造的なプロセス
どのようなものを創るのかというアイデアから、その実現のために平面の素材を用いて立体を創り上げていくというプロセスも、建築とファッションに共通して見られる性質です。このセクションでは、建築家やファッションデザイナーが、当初の発想から作品へ仕上げていくまでのプロセスに焦点を当てます。
建築家フランク・ゲーリーが《ウォルト・ディズニー・コンサートホール》(1987-2003年)を創りあげていくまでの過程や、ファッションデザイナー、ナルシソ・ロドリゲスのスケッチ、イザベル・トレドの創作の過程などを見ていただく予定です。
フランク・ゲーリー
《ウォルト・ディズニー・コンサートホール》(アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス)
2003年
Photo (c) Todd Eberle
【II. 形態の生成】
●幾何学
幾何学的なフォルムは、材質や構造の関係から、建築にとって本質といっても過言ではないほど、常に建築の基本として存在してきました。
一方、身体の曲線をなぞる洋服において、直線的な造形は定番の形ではありませんでした。
ここでは、最近の両者と幾何学の関係を、妹島和世+西沢立衛/SANAAの《金沢21世紀美術館》(1999-2004年)やプレストン・スコット・コーエンによる《テル・アヴィヴ美術館》(2004-08年)、建築家メージン・ユーンによるメビウスの環をモティーフにした《メビウス・ドレス》(2005年)、イザベル・トレドの単純な楕円がドレスになる《パッキング・ドレス》(1988年春夏)やヨーリー・テンのドレスなどから探ります。
プレストン・スコット・コーエン
《テル・アヴィヴ美術館》(イスラエル、テル・アヴィヴ)
2004-08年
Courtesy Preston Scott Cohen
●ヴォリュームの構築
複雑で緻密なヴォリューム感のあるフォルムは、これまではファッションがもつ特権でした。
ジュンヤ・ワタナベ、コムデギャルソンの《テクノ・クチュールあるいはソワレ・コレクション》(2000-01年秋冬)やフセイン・チャラヤンの《シェイヴド・チュール・ドレス》(2000年春夏)などは、その典型です。
しかし、ここ最近の技術革新により、建築においても伊東豊雄+アンドレア・ブランジの《ゲント市文化フォーラム コンペティション応募案》(2004年)のような構造とヴォリューム感のある装飾が一体化した自在な造形が可能となりつつあります。
本セクションでは、上記作品に加えグレッグ・リン・フォームや、フォーリン・オフィス・アーキテクツの建築作品などを展示します。
【III. 構成の技法】
1980年代以降にみられる建築とファッションの緊密な関係は、最新の技術や素材の開発抜きには語れません。このセクションでは、両者の技法あるいは技法的な発想の共通点を以下の項目に分類し提示します。
●スキンの構造化
●構築/脱構築/再構築
●包む
●ドレープをつくる
●畳む
●プリーツをつける
●プリントする
●織る
●はりだす
●吊る
【IV. 両者の融合】
最先端の技術を駆使し、今日でも建築とファッションは進化し続けています。
テスタ&ワイザーは、建築家でありながらも、菱沼良樹の《インサイド・アウト・2ウェイ・ドレス》(2004年春夏)などから着想を得たカーボンファイバーを素材とする布地を開発し、それを建築に応用する試みを企てています。
その他、建築家エレナ・マンフェルディーニによる《カスタム・ドレス》(2006年)やナンニ・ストラーダのレーザー・カットによるケープ、ヴィクター&ロルフの《ブルースクリーン・コレクション》(2002-03年秋冬)の映像などの作品を展示し、今後の両者の新たな融合の方向性を示唆します。
国立新美術館
お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600
http//www.nact.jp/