北川健次新作展 - 『Element-回廊を逃れゆくアポロニオスの円』
2007年6月4日(月) - 6月16日(土) 11:00 - 18:00(土曜 - 17:00) 日曜休廊
不忍画廊
【版画―二次元のオブジェの可能性を求めて】
北川健次
今秋、パリの出版社から詩人のアルチュール・ランボーをモチーフとした美術作品について論考した研究書が『Le regard bleu d’Arthur Rimbaud』というタイトルで刊行されるが、その中に、私の版画集に収めた二点の銅版画も掲載されることになった。
テクストの対象となる美術家は私の他に、ピカソ、ブラック、ジャコメッティ、マックス・エルンスト、ジャン・コクトー、メープルソープといった個性的な人選であるが、刊行に併せて二00八年三月まで美術館での刊行記念展も開催される予定になっている。
日本語版と同時に海外でもその質を問うべく版画集の英語版(および仏語版)を刊行してきたが、二年前に実現した、版画のイメージの舞台となったパリのパサージュでの実験的な展示に続き、今回のような形となって評価されてきている事は、版画集に独自な表現の可能性を求め続けている私にとって、さらなる意欲へと高まっていくものがある。
さて、今回の版画集は八点の銅版画から成り立っている。
私の内なるオブセッションを、幾何学的図形に投影し、内なるイメージの深層を立ち上がらせてみようというのがテーマである。
舞踏家をモデルとした実際の写真撮影から制作が始まり、私が今まで培ってきた方法論と対置させ、それらを等価値に取り込んで、八面体の幻視的な装置のように配置を試みてみた。
版画にしか出来ない表現の可能性の一つに「版画集」という存在がある。
駒井哲郎や池田満寿夫といった60年代の版画の旗手たちの時代に比べ、昨今はこの可能性に挑戦しようとする作り手は少なくなってしまったが、私はこの実験性にみちたスリリングな構造の中で「二次元のオブジェ」としての版画の意味を確立しようと思っている。
「版画集」―それは私にとって限りない可能性を秘めた、詩想と謎を搦め捕るための危うい装置なのである。
【出品内容】
・新作版画集『Element - 回廊を逃れゆくアポロニオスの円』刊行
(色彩銅版画8点収録/ED48/38×28.5cm)
・新作オブジェ4点出品予定
・絶版作品(画廊コレクション) 銅版画代表作+秀作版画集
不忍画廊
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