垣谷はこれまでドローイング、音響、映像を組み合わせたインスタレーションを発表してきました。
多くの作家について当てはまる以上に、垣谷の展覧会ではその時々において設定されたコンセプトとストーリーに則って展覧会構成と作品内容が呼応し合い、展覧会そのものが一つに包括されるように巧みに設計されたアッサンブラージュとしても捉えることができるでしょう。
その点、昨年児玉画廊|東京にて発表した「20 members」展などは特徴的であるといえます。
20本の短編映像からなるインスタレーションであるその作品では、それぞれが独立した20のキャラクターとして、まさしく寄せ集めのグループを作るように垣谷の手によって「編集」され、更に3chの出力それぞれがお互いを干渉しあうことで空間内の音響と映像の組み合わせは複雑化します。
一人の人格にも様々な側面があるように、「20 members」とは主体的にも客体的にも複雑化した多面性の凝集である人間の内面を模しているようにも思えます。
今回の「discordant affair」は、前回の「20 members」の凝集する図式を継承しつつも、一方ではタイトルが表すように、垣谷が自己のイマジネーションの中から寄せ集める断片が、そのプロセスにおいてお互いに引き起こす「仲違い」を表現の中核として捉えた展覧会構成となります。
垣谷にとってこの展覧会は一つの戦略であって、例えばドローイングや映像、音響等、異なったメディアの作品を同列のものとして配した時、必然的におこる不整合こそ、未だ見ぬものを見つけ出す契機となりうるのではないか、つまり「仲違い」の状況から弁証法的な結論を導くのではなく、調子はずれなものはあえてそのままに、整合されない不安定さの中から「観念のすきまやほころび」を見つけることになれば面白い、と述べています。
異なる映像を重ねるようにダブルプロジェクションする最新作、別室に展開されるドローイングインスタレーションや映像作品が作り出す展覧会総体としての不整合を通じて垣谷が見つけ出そうとする何かを作家と同じ視点でもどかしく模索してみるのも良いかもしれません。
児玉画廊
大阪市中央区備後町4-2-10 丸信ビル2F
TEL:06-4707-8872