EXHIBITION | TOKYO
アントニス・ピッタス(Antonis Pittas)
「Paraesthesia」
<会期> 2023年9月12日(火)- 10月14日(土)
<会場> MUJIN-TO Production
<営業時間> 水~金:13:00-19:00 / 土日:12:00-18:00 月火祝休
無人島プロダクションではこのたび、ギリシャ出身のアーティスト、アントニス・ピッタス展を開催いたします。
アントニス・ピッタス(b.1973、アテネ出身、アムステルダム在住)は「歴史のリサイクル(歴史の現代化/現代の歴史化)」をテーマに研究・制作をしているアーティストです。
活動家というよりは時代の観察者として、ピッタスは現代の社会的・政治的な問題から発生するセーフティとコントロール、経済危機、抵抗、暴力や破壊行為といった側面を作品化しています。バウハウス、デ・ステイル、ロシア構成主義を含むモダニズムと歴史的前衛芸術の視覚言語をサンプリングしながら、それらの歴史的な発展経路を独自にマッピングし、それぞれの事象がどのように現在に再登場しているかを検証しています。彼の研究に基づくアプローチは、ユートピア的な願望は簡単にその反対に転じ、破壊、抑圧、権力と権威の肯定につながるという考えに基づいています。ピッタスの作品は、この反転のダイナミズムを明らかにすることで歴史と現在の両方について考察するための空間を提供しようと試みています。
本展の展覧会タイトルである「Paraesthesia(パレステジア、感覚異常)」とは、手や腕、脚、足などに感じる痺れやヒリヒリ感、灼熱感などの身体感覚を指す言葉です。
自らもこの症状に悩まされているピッタスは、「パレステジア」という概念を、現在の政治的現実――暴力的、破壊的な――に対して麻痺していたり無関心だったり、また方向性を見失ったりする集団心理を描写するメタファーとして捉えました。今回フロア全体を使い、意図的にずらした床とParaesthesiaの立体文字のインスタレーションを構成要素にすることで、視覚的な錯覚を誘発させます。
また、インターネット上のニュースソースや医学雑誌から抜粋した破壊的な現実を象徴する人物や爆発などのイメージを、道路標識によく使われる赤、青、白の高照度反射シートにメタリックシルバーのインクでシルクスクリーンプリントした平面作品は空間を囲うように展示します。
シルクスクリーン作品をフラッシュで撮影すると、反射特性が誘発され、肉眼で見るイメージが反転します。ピッタスは、鑑賞者に作品の撮影を呼びかけることで、作品に能動的な役割を担うように促し、撮影するという行為を通して鑑賞者を目撃者へと変えます。ピッタスは作品のパフォーマティブな側面を通して、見えるものと見えないもの、内部と外部、開かれた公共空間とアートスペースの内部との間の露出と隠蔽についての議論を始めようとしているのです。
ピッタスのアジア初個展となる無人島プロダクションでの本展では、今年3月にアムステルダムのAnnet Gelink Galleryで発表したインスタレーションをベースに5月にリサーチのために来日した際にインスパイアされた要素が反映された新作を加えて構成します。日本でのリサーチを通して制作した新作は、シルクスクリーンプリントを漫画のコマのように扱い、漫画やゲームなどのファンタジーの世界と現実をパラレルワールドのように生きる私たちの日常をあぶりだします。漫画のコマ(パネル)にはピッタスが街中で見かけた移民問題に対するデモ行進のイメージが映し出され、漫画というフレームを使い現実にフォーカスさせようという試みでもあります。ピッタスの創り出す現実との感覚のずれにぜひ会場で向き合ってみてください。
助成:オランダ王国大使館、Creative Industries Fund NL
協力:オランダ王国大使館、Annet Gelink Gallery
MUJIN-TO Production (無人島プロダクション)
https://www.mujin-to.com/
東京都墨田区江東橋5-10-5
tel:03-6458-8225