EXHIBITION | KYOTO
黒田アキ(Aki Kuroda)
「NEO SELF-PORTRAIT」
<会期> 2023年4月8日(土)- 5月21日(日)
<会場> MORI YU GALLERY
<営業時間> 12:00-18:00 月火祝休 ※4/29 (土) – 5/5 (金)休廊
本展では黒田の新作絵画を展示いたします。みなさまどうぞご高覧ください。
黒田は、顔をモチーフにした作品をここ数年描いてきた。
黄色やウルトラマリン・ブルー、水色といった鮮やかな色使い、とても激しいストロークによって描かれたその顔は、幼少期にみた書籍『ミノトール』からの影響が大きいと彼は語る。
30 年前からすでに、ミノトールは黒田の中心モチーフとして描かれていた。
1993 年東京国立近代美術館での個展に出品された『Minosidéral I ( ミノシデラル )』(Minos「ミノトール」と sidéral「恒星の」を組み合わせた造語)は、3連からなる絵画作品である。
白い地の上に描かれた真っ黒なミノトールを中心に据え、白い隕石が散りばめられたような印象を与える絵画2点が両脇に配置される。
勇者ペルセウスによって殺されたミノトールが星になり、暗黒のブラックホールから離れた場所に存在する。
Minosidéral は、絵画面では黒一色に塗りつぶされている。
ただ、黒一色といってもそれは幾重にも重なった線の「縺れ」であり、解けた線の端は宇宙空間を通り、果てはブラックホールへと繋がっている。
またその線は、ミノトールが幽閉されていた迷宮と外の世界とを繋ぐアリアドネーの糸でもあった。1990 年代後半に、黒田は『Minotauromachine ( ミノトロマシーン )』という作品を描いている。
黒田によって宇宙に浮かぶ星へと復活したミノトールは、流星のように落下した。その後、黒田は瀕死のそれを手術するかのように機械と繋ぎ合わせて人造人間のように仕立て上げたのだ。
神話では、ミノス王の后であるパーシパエーが名工ダイダロスに白い雌牛の模型をつくれと命じ、彼女はその白い雌牛の模型に入り込み、雄牛と関係を結び誕生したのがミノトールであった。
黒田は、神話の登場人物すべての役を演じているかのように見えてくる。
さらに、主人公たるミノトールとも交わったともとれるだろう。
そして出来上がったものが 2010 年前後のシリーズであった。
そのシリーズは白黒で表現され、青い目が埋め込まれていた。ミノトールの神秘性が非常に際立った作品だった。
2017 年頃から制作され始めた『SELF-PORTRAIT』は、黒田自身の顔が前面に押し出され、もはやミノトールは一部になっている。
それらは親近感と怖さの間で揺れ動きながら鑑賞者に迫ってくる。
次に制作された『Super self-portrait』シリーズでは、顔だけにフォーカスしたものからズームアウトされ、全身(figure)が描かれたものだ。
fugure は、浮遊感とともに空間に浮かんでおり、その片手には Self-portrait が切り取られたように抱えられている。
そしてその空間の背後を時折、兎が顔を覗かせる。
ミュータントのような兎(Lapin)だ。
空間と時間をかき回すかのようにジャンプする Lapin は、また別の作品へと我々を誘う。
ある都市の風景だ。人や動物やミュータント、怪物。
異空間へと繋がるトンネルや道路、小道、塔に城が混在しながら、得体の知れない黒い竜巻のようなものが描かれている。
ブラックホールであろうか。
すべてがそこに吸い込まれそうになるのだが、抱え込まれ、逃れつつも存在する黒い円筒は、『Super self-portrait』の figure の変化した姿にもみえてくる。すべてが綯い交ぜになり、線のように縺れた結果できている cosmogarden(宇宙庭園)だ。
遠くに顔がポツンと存在しているのがみえる。
それを『NEO SELF-PORTRAIT』と黒田は名付けた。
いつしかそれはミノトールをも超えて、黒田自らの世界へと我々を誘う。
黒い髪の毛はそこだけ独立して面となり、黒い奥行きのある夜となり、そして時間のある異次元の空間へと広がり始める。
闇が訪れ、顔はラパン(Lapin)に変わり、その目はいつしか宇宙に変わり、我々鑑賞者はそこに誘われ、色々なミュータントに出会うのだ。
MORI YU GALLERY (モリユウギャラリー)
http://www.moriyu-gallery.com
京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19
tel:075-950-5230