EXHIBITION | TOKYO
篠原有司男(Ushio Shinohara)
「吾輩のパンチがオーロラに炸裂!」
<会期> 2021年12月4日(土)- 2022年1月15日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休 *冬季休廊 2021年12月26日(日) – 2022年1月10日(月)
ANOMALYでは、2021年12月4日 (土) より2022年1月15日 (土) まで、篠原有司男(しのはら・うしお)個展「吾輩のパンチがオーロラに炸裂!」を開催いたします。
1932年東京生まれの篠原有司男は、東京藝術大学に在学中の1955年より読売アンデパンダン展への出品をはじめ、1959年第11回展で《こうなったら、やけくそだ!》を出品、60年第12回の読売アンデパンダン展では東野芳明に工藤哲巳、荒川修作と並び、「反芸術」と評されました*1)。同年、新宿区百人町のホワイトハウス(磯崎新設計。現WHITEHOUSE*2))を拠点に吉村益信、赤瀬川原平、荒川修作らと、今や伝説となったネオ・ダダイズム・オルガナイザーズを結成。毎週土曜日の夜にミーティングパーティーを開催、吉村の結婚を期にその過激さから半年ほどで解散に至りましたが、60年安保闘争など社会情勢の激動期の頃、60年結成のゼロ次元*3)や、以後63年結成のハイレッド・センター*4)らと並び同時代の動向として、日本の前衛芸術の歴史に残る活動でした。
篠原のひときわ激しく常識を凌駕するアクション、またジャスパー・ジョーンズ《ドリンク・モア》、ロバート・ラウンシェンバーグ《コカコーラ・プラン》を題材にした一連の「イミテーション・アート」(彼らとは1964年に来日した際に交流をもった*5))や、日本の伝統的世界観とポップ・アートの表現を融合させた「花魁シリーズ」など、話題作を発表し一躍アート界の寵児となります。
のちに篠原の代表作のひとつとなる「ボクシング・ペインティング」も、1959年から61年ごろの間、実験と実践が繰り返されました。当初それは、屋外に広げた布に、墨汁を染み込ませ丸めた布を落とし跡をつける実験から始まり、グローブの代わりにボロ布を拳に巻きつけ、古い布や模造紙をキャンバス代わりに右から左へ墨汁のパンチを繰り返す、というアクションとして実践されました。
のちに篠原は「いい絵を描こうと思って本当にいい絵を描けるわけがない。だから思考が追いつく前に素早く打つんだ」、と語っています。
その後、ロックフェラー3世基金の奨学金を得て1969年に渡米。以後2021年現在もニューヨークに活動拠点をもち、ダンボールを素材にしたモーターバイクの作品や、原色を大胆に使い大衆文化を描いた絵画、またボクシング・ペインティングなどのエネルギーに満ち溢れた作品を、90歳を目前とした現在もなお精力的に制作しています。
今回4年ぶりの日本での個展となる本展では、ボクシング・ペインティング、また近年シノハラ・スタジオで発見された70年代〜80年代にかけて制作された、主にニューヨークの大衆文化を描いた極彩色のペインティング、さらに巨大な花魁シリーズを公開いたします。
田名網敬一氏との往復書簡でも語られているように、単身で渡ったニューヨークでの生活、目にする作品やアート界に毎日のように大きなインスピレーションを受け、消費社会のダイナミズムと向き合いながら制作したダンボールなどの廃材を用いた様々な立体作品、大衆の日常を生き生きと鮮やかに描いた絵画を制作し、アクションを実践してきた篠原有司男の、軌跡が辿れるような展覧会になる予定です。
「早く、美しく、そしてリズミカルであれ」を標榜するボクシング・ペインティングは、1991年国立国際美術館での「芸術と日常 反芸術/汎芸術」のオープニング・パフォーマンスで1961年以降初の復活を遂げました。
また、1994年横浜美術館でアレクサンドラ・モンローのキュレーションによる「戦後日本の前衛美術 Japanese Art after 1945: Scream against the Sky」で《ドリンク・モア》(1964)を再発表、戦後日本美術の動向の一端を担う評価を得ます。以後1997年水戸芸術館現代美術センターで開催された「日本の夏1960-64 こうなったらやけくそだ!」展、1998年大分市アートプラザの「ネオ・ダダJAPAN 1958-1998 磯崎新とホワイトハウスの面々」展など、90年代より再評価の機運が高まりました。
続いて2007年豊田市美術館で開催された「モヒカンとハンガリ ギュウとチュウ(篠原有司男と榎忠)」展、2013年アーティストの乃り子(海苔こ)夫人との日常の葛藤を綴ったドキュメンタリー映画「キューティー&ボクサー」が公開され、第86回アカデミー賞にノミネートされるなど、大きな話題となりました。
2012年、サミュエル・ドースキー美術館で個展「シノハラ・ポップス!」*6)開催、以後2015年にはアメリカを巡回した「インターナショナル・ポップ」(ダラス美術館、ウォーカーアートセンター、フィラデルフィア美術館)*7)、テート・モダンで同年開催され巡回した「ワールド・ゴーズ・ポップ」*8)に参加。同展では篠原の花魁シリーズがメインイメージに使われました。
2017年、刈谷市美術館で「篠原有司男展 ギュウちゃん”前衛の道”爆走60年」、2018年には北九州美術館、千葉市美術館、静岡県立美術館、高知県立美術館を巡回した展覧会「1968年 激動の時代の芸術」にも参加。2019年には、東京ステーションギャラリーの「パロディ、二重の声――日本の1970年代前後左右」に出品。
また、ベニスのプラダ財団で開催中のペーター・フィッシュリがキュレーションする展覧会「STOP PAINTING」*9)や、フィラデルフィア美術館「Jasper Johns: Mind/Mirror」展*10)にも篠原の作品が出品されており、国内外から高い評価を受けています。
若き頃と変わらぬ頭脳明晰さで高速回転する思考、その思考すら追いつかれないようにキャンバスをヒットするボクシング・ペインティング、「前衛の道」をひたすら走り続ける、篠原有司男の帰国展です。ぜひご高覧下さい。
ANOMALY(アノマリー)
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