EXHIBITION | TOKYO
小林耕平(Kohei Kobayashi)
「ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン 」
<会期>2019年10月19日(土)- 11月9日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 11:00-18:00 日月祝休
ANOMALYでは、10月19日(土)から11月9日(土)まで小林耕平個展『ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン』を開催いたします。
『ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン』は、2013年にグループ展『ユーモアと飛躍―そこにふれる―』(岡崎市美術博物館、愛知)、また翌年『1974 第一部 1974年に生まれて』(群馬県立近代美術館、群馬)で発表された小林耕平のヴィデオ・インスタレーションで、本展では同作品を再構成し、東京では初出になります。
小林耕平(こばやし・こうへい、b.1974)は東京に生まれ、愛知県立芸術大学美術学部油画科を卒業、現在は武蔵野美術大学で教鞭をとり、埼玉を拠点に精力的に活動を続けています。近年の個展に『蓋が開かない、屋根の上の足音』(山本現代、東京、2015年)、『あくび・指南』(山本現代、東京、2018年)などがあり、また『アーティスト・ファイル2015 隣の部屋―日本と韓国の作家たち』(国立新美術館、東京/韓国国立現代美術館、ソウル、2015年)、『小林耕平×高橋耕平 切断してみる。二人の耕平』(豊田市美術館、愛知、2017年)など、様々な美術館の展覧会にも出展、また2016年のあいちトリエンナーレや、同年瀬戸内国際芸術祭にも参加するなど、国内外で注目を集めています。
小林は、伊藤亜紗(*1)提供による奇妙な思考の道筋や論理の絡繰でできたテキストを下敷きに、小林独自の解釈で日用品を組み合わせた奇妙なオブジェクトと、そのオブジェクトを説明する映像を制作し、複雑なインスタレーションを形成します。そのオブジェクトは、我々の認識からすると一見、モノとしての機能を失ったオブジェクトとして提示されています(例えば、長いスパイラル状の針金に刺さった2つのテニスボール、など)。
しかしそのオブジェクトは、小林による新たな「使用方法」を解説する映像(デモンストレーション)によって、そのモノ本来の役割を軽やかに取り払ったのちに、代わりに別の可能性や意味を添えて、新しい装置に「見立て」られ、奇妙な機能を持ったオブジェクトとして「再生」されていきます。その映像は、小林の解説の受け手であるcore of bellsの山形育弘(*2)を相手に、しかしその解説すらも徐々に破綻していく様を提示し、鑑賞者にまなざしや思考の転換を喚起します。
たとえば、本展『ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン』では、「町をゾンビタウンにする」ために書かれた伊藤氏のテキストをもとに、小林が考案した「タオルにヤクルトの空ケースを取り付けたオブジェクト」が登場しますが、ヤクルトを「水分」として摂取する様をもって、身体を「再生機」というオブジェクトに「見立て」ます。インスタレーションを構成する映像の中で、「水分」が体内を移動する様はその移動の履歴と記録(レコード)である、と提案し、その奇妙な「再生機としての身体」をデモンストレーションしますが、そこでは常に「解釈のズレ」が生じます。小林は山形を相手に映像の中で問答を繰り広げながら、このように様々なオブジェクトの使用方法を説明しますが、二人のやりとりはその問答を繰り返すことで奇妙さと解釈の多様性を呈し、鑑賞者をより高度で未知な思考に導きます。小林によれば「齟齬とはこの場にはない空間を指し示すこと」であり、ひいては我々の世界の捉え方に、不思議な変化をもたらします。
展覧会初日10月19日(土)は、伊藤亜紗氏と小林によるトークイベントを開催します。
また、展覧会最終日11月9日(土)には、クロージングイベントとして、前出の山形育弘と小林によるパフォーマンス「Post Shaped Piggy Bank」(2017)や、core of bellsのパフォーマンスなどを行います。
なお本展と同時期に、東京国立近代美術館で開催される『MOMATコレクション』展(11月1日より2020年2月2日まで開催)では、オブジェクトを鑑賞することで「東海道中膝栗毛」を奇妙に旅することができる、小林耕平の代表作『東・海・道・中・膝・栗・毛』(2016、作家蔵)もご覧いただけますので、合わせてご案内いたします。
*1)伊藤亜紗:東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授、MIT客員研究員。近著に『記憶する体』(春秋社)、『どもる体』(医学書院)など。
*2)山形育弘:小林耕平の映像作品でおなじみのハードコアバンドcore of bellsのボーカルで、小林とデモンストレーションを繰り広げる。
『ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン』
作品制作にあたり、伊藤亜紗さんに5つのテキストの執筆を依頼した。打ち合わせの段階では、わたしが今回問題にしたいキーワード「異なる次元が同居したもの」「物と風景を同等のものとして扱う」などいくつか伝えたのみで、基本的に伊藤さんの作品として書いてもらうようにお願いした。
出来上がってきたテキストのタイトルは『ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン』である!
ゾンビといっても、通俗的な意味でのゾンビではなく、物体を再生させることで立ちあがる、
「その物体とは別なもの」のことである。
そしてわたしはテキストを設計図とし、ゾンビを再生させるためのオブジェクトを作成する。
次に山形育弘さんを相手に、関東から中部地方までの各地を舞台にゾンビを再生させることを試みる。撮影は渡邉寿岳さんに依頼した。
この4人の関係は、全員が解答を知らないということが前提になっている。
伊藤さんはわたしのやりたいことを予測しながら、彼女のテーマに接続しテキストを書き、わたしは伊藤さんのテキストに応答するようにオブジェクトを作成し、問いを立て、ロケ地を設定する。
山形さんはわたしの解説を通しながら同時に伊藤さんのテキストも解釈し、渡邉さんは山形さんに続く第2の観客とし、ビデオカメラを通して、わたしと山形さんが討議をしている様子を映像で記録する。
4人の間には、絶えず解釈のズレが生じることになる。それは4人が異なるメディアを使っているからである。
伊藤:テキスト 小林:オブジェクトと会話 山形:会話 渡邉:映像
対話は齟齬が生じることで運動を起こし、理解または同意することで展開が起きる。
齟齬とはこの場には無い空間を指し示すことである。そのとき、はじめて作品を作ることに目的が与えられる。
2019年9月 小林耕平
ANOMALY(アノマリー)
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