EXHIBITION | TOKYO
鬼海弘雄(Hiroh Kikai)
<会期> 2025年4月4日(金)- 5月2日(金)
<会場> NANZUKA UNDERGROUND 1F
<営業時間> 11:00-19:00 日月休
この度、NANZUKAは鬼海弘雄の個展を開催いたします。本展は、2020年以来5年ぶりとなる当ギャラリーでの開催となり、1980年代から2010年にかけて撮影された肖像写真および風景写真からなる「ポートレイト」の作品群を展示いたします。
鬼海は、1945年山形県生まれ。法政大学文学部哲学科卒業後、トラック運転手、遠洋マグロ漁船乗組員、暗室マンなど様々な職業を経て写真家になることを決意。1973年より浅草で出会った人々を撮り続け、1987年『王たちの肖像:浅草寺境内』、1996年『や・ちまた:王たちの回廊』、2004年『Persona』、2019年『PERSONA 最終章』と、45年以上に渡る一連の浅草シリーズを収録した数々の作品集を発表。2004年には写真集「PERSONA」で第23回土門拳賞を受賞。これまで、「ペルソナ」(土門拳記念館、山形県、2004年)、「東京ポートレイト」(東京都写真美術館、2011年)、「Persona 最終章」(奈良市写真美術館、2019年)や、故郷である寒河江市においては、「鬼海弘雄 回顧展 ~時を越える繋がり~」(寒河江市美術館、山形、2024年)などの個展を開催。その作品は、ニューヨークのInternational Center of Photographyにも収蔵されています。
鬼海は、写真集『王たちの肖像:浅草寺境内』や『Persona』に見られる肖像写真、すなわちポートレイトによって広く知られています。鬼海作品の最も重要な点は、被写体となる人々の生き様や人間性をいかに写し撮るか、という点にあります。1973年より浅草の浅草寺に立ち、愛用のハッセルブラッドを手に、一日の大半を通り過ぎる人を見つめ続けてきました。撮影する人は、一日に1人から2人。多くても3人。鬼海は何かを感じ取った人にのみに声をかけ、毎回同じ境内にある朱色の背景の壁で撮影を行います。鬼海がファインダーを向ける人は、無名の人々です。職人、失業者、水商売、老人、学生、主婦、ヤクザ、ないしは職業不明者ですが、鬼海は彼・彼女らを「王」と呼び、その尊厳を捉えます。
一方、風景写真は肖像写真と対をなすシリーズで、画面から人物を完全に排除しています。例えば、家に干された洗濯物や、誰もいない商店街の入り口、店の看板などがその例です。鬼海はこれを「空間のポートレイト」と呼び、人物の存在を排除することで、日常生活の中にひそむ”匂い”や、そこにあった人々の息遣いを逆説的に浮き彫りにしています。本シリーズもまた1973年から撮りためられ、写真集には『東京迷宮(1999)』と『東京夢譚(2007)』があります。
写真家はしばしば覗き見趣味的な視線の持ち主として語られますが、鬼海の場合は、その独特なキャプションのロゴスによってそれを乗りこえているように思えます。鬼海は、被写体との関係性を、特別視でも客観視でも蔑視でもなく、写真家自身と同じ地平にあるものとして捉えます。そして、写真を撮るのと同じくらい慎重にキャプションの言葉を選びぬくのだと語っています。さらに、鬼海は「人を好きになること」から作品が生まれるとしており、そこには理想的な社会を希求する写真家の誠実さ、愛情、そして好奇心が色濃く表れています。
「わたしは、人が他人にもっと思いを馳せ、興味を持てば、功利的な社会の傾きが緩み、少しだけ生きやすくなるのではないかと思っている」
(『ぺるそな』、草思社、2005年)
また、本展に関連して、作品集「Asakusa Portraits」を4月4日より、当ギャラリーならびにNANZUKA online store にて数量限定で販売予定です。
ギャラリー1Fの展示室で開催する本展には年齢制限はございませんので、どなたでもご入場いただけますが、本展と同時開催の2F展示室「佐伯俊男 個展」では、性的・暴力的な表現を含むため、2Fへのご入場は16歳未満の方にはご遠慮いただいております。また、これらのテーマに敏感な方やご不安を感じる方は、鑑賞をお控えいただくことをお勧めいたします。
NANZUKA UNDERGROUND(ナンズカアンダーグラウンド)
https://nanzuka.com/ja
東京都渋谷区神宮前3丁目 30-10
tel:03-5422-3877