EXHIBITION | TOKYO
古橋義朗(Yoshiro Furuhashi)
「木と山々」
<会期> 2025年3月1日(土)- 3月22日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
このたび、小山登美夫ギャラリー六本木では古橋義朗の展覧会「木と山々」を3月1日から開催します。
古橋義朗(1924-2006)は日光に生まれ、その風景を生涯描き続けた画家です。日光の旅館に生まれ、独学で絵を学びました。油画を描いていた時もありますが、水彩画に魅力と可能性を感じ、最後まで水彩で自分の絵を追求しました。
自転車を運転しなかった古橋は、いくつかの旅行以外、その対象は自分の足で歩いていける日光の山々の自然でした。実際の風景をモチーフとしながらも、自在に風景を画面の中で構築していく様は、視覚だけではなく、その空気も肌で捉えているようなリアリティを持ち、見る人に絵の豊かさを感じさせます。絵に描かれた木や山々のとても魅力的な形体と瑞々しい色彩が、とても現代的に感じられるのです。
この作品を知ることになるのは、日光に滞在しているアーティストのアン・イーストマンが、いま日光の小杉放菴記念日光美術館でとっても面白い展覧会があると1月はじめに連絡してきたのがきっかけです。その後、食事をしていた時に古橋さんの絵の話になり、その2日後、私は日光に展覧会を見に行くことになりました。50年以上も前に制作されたとは思えない魅力的な作品が目の前に現れ、こういう作品になぜ、出会うことがなかったのだろうと思い、その作品を多くの人にみてもらいたいと思い、今回の展覧会になったのです。
今回の展示は、初期から晩年までの20点の作品が展示されます。没後、本格的に東京で展示されるのは今回が初めてとなります。この機会に是非、古橋義朗の絵の世界を楽しんでください。
アン・イーストマン氏が古橋展のためにテキストを書いてくれました。子供の時から日光に来ていたアンにとっての日光という場所と、アメリカの美術の歴史とアメリカの体験とからでてきた古橋作品をめぐる論考はとても素晴らしいです。是非、楽しんでください。
「日光周辺の風景を、穏やかとは表現しないでしょう。一番高い男体山には、下の街に向かってまっすぐ落ちる侵食された斜面が広がっています。中禅寺湖は底知れぬほど深く、目のくらむような高さから流れ落ちる滝となって溢れ出し、その下にある川は巨大な岩を削りながら流れています。数百年に一度、この場所を完全に洗い流してしまうほどの恐ろしい嵐が襲ってきます。この力によって、山々は神聖な存在となります。山々は生き物のように捉えられ、この地に住んできた人々や動物の世代を見守っているのです。当然のことながら、日光は巡礼の地となりました。人々は何かを求めて日光を訪れます。興味深いことが起こっている場所を見つけようと、遠くまで足を運ぶ人もいます。また、長い時間を過ごせば、いつかは自分のいる場所にも何か面白いことが起こるだろうと考える人もいる。日光に何度も足を運ぶうちに、私はこの2つのことを同時にしているのかもしれないと気づきました。
私の日光との関係は、地元民でも観光客でもない、その中間にあります。最初に日光を訪れたのは、両親がここに家を買った子供の頃。それから何十年もの間、家の手入れのために戻ってくるという形で、日光のやり方を学んできました。しかし、日光をこたえやインスピレーションを求めて訪れる場所だと思ったことは一度もありませんでした。
古橋義朗が私の目の前に現れたのは今年、小杉放菴記念日光美術館で彼の日光の水彩画を観たときでした。淡く、不安定で、カラフルで抽象的な風景画に私は強く惹かれました。マースデン・ハートレーやミルトン・エイブリーといったアメリカのモダニズム風景画家を思い起こさせましたが、おそらく古橋は彼らの作品を観たことはないでしょう。」
(アン・イーストマン)
*全文はこちらよりご覧ください。古橋義朗展_アン・イーストマンによる論考
最後に今回、大変お世話になった小杉放菴記念日光美術館の迫内祐司さま、古橋さまの遺族の方に御礼申し上げます。
小山登美夫
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225