EXHIBITION | TOKYO
豊原国周(Kunichika Toyohara)
「ネオ江戸」
<会期> 2025年1月25日(土)- 2月24日(月)
<会場> Aoyama Meguro
<営業時間> 13:00-18:00(金 20:00まで) 火水木休
この度、弊廊の新春第一弾企画として、豊原国周(1835- 1900)の個展「ネオ江戸」を開催いたします。
国周は、江戸末期から明治時代にかけて活躍した歌川の浮世絵師で、特に歌舞伎役者絵の分野で時代を席巻しました。その作品は、多色摺りによる鮮やかな色彩が特徴的で、画面一杯に役者の顔を大きく描いた「大首絵」では、観る者を睨むような迫力のある表情が印象的です。また、3枚続きの横長画面に役者の半身を劇的なポーズで配置する手法は、まるで後に台頭する映画のワイドスクリーンを予見したかのようです。さらに、舞台裏の様子をリアルに描き出した「楽屋絵」では、役者たちの日常や舞台の裏側が下位見え、現代でいう「推し活」的な視点で大衆に親しまれました。これらの作品は、浮世絵の伝統を新たな次元へ引き上げるものでした。
国周の絵は当時の大衆に熱烈に支持され、現在確認されているだけでも1万3千点以上の作品を残しています。しかし、彼の死後、モチーフとなった役者たちも時代の流れの中で忘れ去られたことで、国周の作品は、歌麿や北斎、写楽らが印象派に与えた影響に比べると評価されることがなく、長らく埋もれた存在となりました。特に近年、西洋における浮世絵の崇高な芸術性への評価軸と国周の作風が程遠かったことも、その一因と考えられます。
彼の作品を眺めると、国周が単なる伝統絵師にとどまらず、未来の視点で「江戸」と言うフィクションを構築していたことがわかります。西洋化が進む明治期においても、彼は「江戸」というモチーフにこだわり続けました。それは懐古趣味でありながらも、過去を未来的に再設定する「レトロポップ」の美学と、同時代の技術革新(彫りや摺りの高度化)を融合させた、先進的なアプローチでした。
また、日本でいう「ビジュアル系」や「グラム系」に通じる要素も多分に見られますが、それらの美学に先駆的な影響を与えた存在こそが、国周だったのです。
まるで150年前の「仮想絵師」が描き出したかのような、過剰な表情、誇張されたポーズ、派手な戦闘シーン、刺青などのグラマラスな描写。これらは、現代のストリートアートやポップアート、あるいはアニメーションに通じるキッチュさを宿しています。
本展では、木版画約35点を展示します。「江戸」と「未来」が交錯する宙吊りの視覚体験をご体感いただければ幸いです。
国周の作品は、この時期に3つの美術館でも展示が予定されており、それぞれ独自の視点から構成されています。それらの展示を見比べることで、国周の多面的な魅力をより深く、そして広くお楽しみいただけます。
Aoyama Meguro(青山目黒)
http://aoyamameguro.com/
東京都目黒区上目黒2-30-6 保井ビル1F
tel:03-3711-4099