EXHIBITION | TOKYO
ベンジャミン・バトラー(Benjamin Butler)
「Trees Alone」
<会期> 2016年3月12日(土)- 4月23日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
〈作品紹介〉
バトラーは山や木々、自然をモチーフとした風景画を描きます。その方法は、抽象画を描く事にも通じており、近年特に頻繁に描かれている木々の絵画は、より抽象的な要素が多く見られます。バトラーが描く単純化された木々の枝や幹のフォルムは、コントラストの明瞭な色彩によって弾き立たされています。さまざまな色彩を操り、縦や斜線、三角、曲線などによる幾何学模様を描いて、具象と抽象の境界を模索するような彼独特の絵画表現を作り出しているのです。
当初風景画のモチーフは、観る人に広く受け入れられる抽象画を描くための、一つの手段であったとバトラーは言います。また、祖母から風景画を制作してほしいという願いを引き受けたのをきっかけに、実際のスタジオでの絵画制作へと発展していきました。そしてそこから生み出されたこの主題が、作家が評価され始めるきっかけとなったのです。
2015年ハフィントンポストに掲載されたインタビューの中で、バトラーは描く事は記録をし、言語や歴史と議論する事であると言います。また作品の中で過去の抽象画家、特にモンドリアンとの「対話」を試みそれを作品に反映していくため、「木」の構成やモチーフは自分にとってまるで「タイムマシーン」のようだったと語っています。
以前彼は、美術史の異なる論点をむすびつけることに興味を持っており、ポストモダンにおいての本質はなにかという文脈において、風景画というシンプルで近代的な主題はとても重要なものと考えていたのです。事実、画面全体に余白を作ることなく反復されるリズミカルな線には、そのまま抽象表現主義の歴史が詰まっているかのようであり、水平垂直のリズムはモンドリアンを、単純化された色面と線との関係はフランク・ステラを彷彿とさせます。
抽象と具象という相反する二つの事柄に関しては、常にバトラーが考え、キャンバスに筆を走らせる行為に欠かせない効果があるものであり、「ロマンチック」と「キッチュ」、「ハイアート」と「ローアート」といった相反するものの考え方も、バトラーの作品制作に対してとても重要な意味を持つものです。
美術批評家ロベルタ・スミスは、2014年ニューヨークタイムズのアートレビューの中で
「(彼の作品は結果として)ミルトン・エイヴリーやアレックス・カッツと同じように、自然に対する敬意を表現し、初期抽象表現を追求した風景画の重要な役割に立ち戻るのみでなく、清々しい程の現代性を感じさせる」
と評しました。
抽象と具象の境界線をなぞるような彼の絵画は、こうしたコンポジションにおける様々な要素がありながらも、詩的で優しさがありつつ、同時に現代的なクールさも漂わせ、個人の記憶に働きかけるように鑑賞者に物静かな瞑想的時間を与えます。
〈作品紹介〉
本展は、小山登美夫ギャラリーでは2年ぶり、5度目の個展となり、2015年〜2016年制作の新作ペインティングを展示致します。
本展に際して、バトラーは次のように語っています。
「私の作品の中に繰り返しの感覚があれば、それは文字通りのものではありません。私は考えを何度も巡らせるのが好きで、時には過去の面影を拾い上げ、再び前面に出します。タイトルの「Trees Alone」は、一本の樹のイメージ(もしくは一つの作品)が、この展覧会の一部となっていくことを意味します。作品は、絵画作品としても、イメージとしても、キャンバスの中の要素としても単体として存在し、そしてそれぞれの絵画は一旦この展覧会から離れると、また単体として存在するのです。複数が単数になり、単数が複雑になるのです。
画家として、私はスタジオで一人の時間を多く費やします。今回の展覧会は、今までの他の展覧会よりも、より自伝的になると感じています。そして、本展は今回の新作を制作するにあたっての考え方やプロセスとより綿密に反響しあっています。2004年、ウィーンでの私の最初の個展のタイトルは「Tree Alone」でした。東京での「Tree Alone」は、ウィーンでの展覧会からの12年の歳月や、ウィーンと東京の9000キロの距離を超えた続きや結果として意味しています。」
13年間生活したニューヨークからウィーンに移り住み4年。息子が生まれ、父となったバトラーは新しい環境の中でより自分自身の作品に向き合い、私生活とバランスの良い制作時間から意欲的に作品を作り出しています。今回の待望の新作をぜひご高覧下さい。
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-10-11
tel:03-6434-7225