EXHIBITION | TOKYO
木下佳通代(Kazuyo Kinoshita)
「等価に存在する何か。」
<会期> 前期:2017年3月18日(土)- 4月8日(土)/ 後期:2017年4月13日(木)- 4月28日(金)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2017 年 3 月 18 日(土)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、木下佳通代展「等価に存在する何か。」を開催いたします。
1939年に神戸に生まれ60年代から作家活動を始めた木下佳通代は、94年になくなるまで”我々が存在する世界の中における存在とは何か”という問いを、作品を通して概念化し続けた作家でした。
木下の作品制作への始まりは、自己の存在を確認することから始まります。物を相対的なものとして捉えれば、存在の在り方は希薄になっていくことに恐怖を覚えたという木下の制作は、それを取り除くために制作を行い、制作することで自己確認を行い、自身の中に生まれた不安を埋めるという作業を繰り返すことになります。
戦後、50年代半ばから70年代初頭にかけ、関西では具体美術がアートシーンの中心となりますが、その一方で、60年代から70年代初頭にかけては、ハイレッドセンター、ネオダダや九州派、時間派といったハプニング、イベントといったパフォーマンスを中心としたグループが、反芸術運動の気運のもと、全国に次々と形成されていきます。そうした時代の境界で活動を始めた木下は、66年に初めての個展を行い、また65年から68年まで、神戸で河口龍夫をリーダーとし結成されたグループ”位”と行動を共にします。木下の極めて強い概念的な本質性は、こうした時代背景と、そのような活動を通してより開けていくこととなります。
同じものを見ているつもりでも、人によって見るもの、見えているものは違うということ。こうした認識の差異こそがその存在を多様なものするが、実在は一つでしかない。木下は、絶対的存在と相対的存在の間にある実在性を、視覚的に表現しようと試みました。個々が受容する際に生じる差異性と普遍性を同在させること、内側と外側を等価にしてしまう在り方を、制作を通じて生涯求め続けたのです。
そうした概念を表現するために、木下にとって写真は都合のよい媒体でした。
目の前に一枚の写真があるとすると、それが例え一点であっても、見る人の捉え方によっては違った意味をそれぞれにもたらすこととなります。10人が同時に見れば、10人各自の認識によって、10の存在の在り方が生まれます。
そうした認識による存在の多様性を視覚化するために、写真の複数性という属性が必要だったのです。
こうして、70年代半ばまでは主に写真を用いて制作してきた木下でしたが、70年代の後半からは、平面と空間における存在の在り方、存在そのものを平面上で作るという新たな表現の試みへと移行していきます。
これまでの自己の概念的なものへのこだわりを捨て、限られた平面をいかに自立させて積極的に存在させるか、言葉を超えて、より自由な精神の開放の場としての絵画を求めたのです。
木下は、80年代から絵画を本格的に描いていきますが、その時期はちょうど世界的にニューペインティングが出現してきた時期と重なります。しかし彼女が到達しようとした先は、全てが等価となり絶対的な存在となる世界を画面の中で成立させるという、新しい概念的絵画の誕生にありました。
本展では、初期の写真作品と晩年まで描き続けた絵画作品を前期、後期に分けて紹介します。この機会に是非ともご高覧ください。
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツ)
http://www.ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731