EXHIBITION | KYOTO
セラツヨシ(Tsuyoshi Sera)
「かさぶた」
<会期> 2017年3月19日(日)- 4月9日(日)
<会場> MORI YU GALLERY 2F
<営業時間> 12:00-19:00 月火祝休
MORI YU GALLERYは3月19日(日)から4月9日(日)まで、
2F
2階の小さなスペースでは、一階のメインスペースとは別の作家が実験的な場としての小展覧会を開催いたします。今回はセラツヨシ個展「かさぶた」を開催いたします。
「ヒトは傷ついたり、疲れたりした時、身体をいたわる。
休息したり、入浴したりしてケアする。それでも調子がよくならなければ病院へ行くかもしれない。
今回の展示は自分自身のそういった体験から得たインスピレーションを基に製作した作品から構成されている。
一貫して生きるということがテーマの根底にありレースやメロンのような網目状の線が、ヒトの運命、人生、生命の摂理を丸ごと包み込むかの様に画面上に表れる。
そもそもメロンの網目は、ひびが入った表皮に内側から果汁が染み出して固まったもので、メロンは繰り返し出来る傷跡を保護しながら成長していく。
この潜在的に備わった生への渇望とも思える現象に、美を、守るという行為を通じて人生に重ねて見ているのかも知れない。
そこにある美しいもの
それを捕まえようと網を張る
それは、あちら側か、こちら側か
ギリギリのところをゆらゆら
残像となってすぐに消える
そして、また編みを張って慰める」
セラツヨシ
「かさぶた=メロンの壁」
セラツヨシ(1974年生まれ)は、島根の片田舎で生まれ、伝統的な仏教的風俗習慣、石見神楽や神話に親しみながら少年時代を過ごした。幼い頃より絵を描き始め、漫画や典型的な印象派、後期印象派、抽象表現主義、新表現主義に影響を受けたという。
大学時代に活動を本格化、大阪外国語大学在学中、ヒトのイメージ形式がどの様なところから来るのかを架空存在(主に妖怪など)を題材に日本と海外の比較から研究、その後、2000年にオーストラリアナショナルアートスクールでファインアートを学び、大阪・シドニー・東京と活動の拠点を移しながら、現代アートの分野で制作を続けてきた。
幼少期から影響を受けていた仏教的な輪廻思想が作品の根幹を貫いてはいるのだが、ただそうした仏教的なイメージだけでなく、セラは、現在の「生」を見つめることで、イメージ、空間、色彩、時間、人、物、関わりなどを再考し構築してきた。自身の近しい人の「死」を契機に作品内に登場し始めたカエルは、身動き一つできないでいる「蛇ににらまれた蛙」からきているのだが、その有様を人の人生=天命と見立て、善きも悪しきも受け入れざるを得ない現実として表している。またセラが八つの頭をもつ蛇で島根の神話の一つ「八岐大蛇」を題材にし、「現在を生き抜く姿」をシンボル化して描いていることも上記の様なことからの派生であろう。
時に様々な神話、逸話、経験から日常の取るに足らない物事や出来事の断片をモチーフとして取り扱い、人に自らの可能性を目覚めさせ、凡庸な事象に潜む美を見出し、新たな関係性を作り出していく。セラは、日常を具象と抽象との間で揺れる曖昧なイメージで描き、最後に絵画表面にメロンの表面にある皺、襞のようなものを上から重ね描いたり、時に既成のレースを貼ることで、描かれた世界をより豊潤なる世界に封印する。描かれた襞やレースによって、画面上にはさらなる変化が生まれるのだが、鑑賞者は過去の記憶に触れられた様に『何処かで見たことが ある』『いつしかそうしたことがある』という思いをセラの襞の奥底に掴みに行こうとすることにより、いつのまにか自らの原風景を携えて作品へと入り込んでいく。メロン表面にある襞とは、「かさぶた」のようなものであり、果実の成長期に果肉と表皮の伸長率のずれによって生じるひび割れを塞ぐ分泌物からつくられるものらしい。セラは自らの描く絵画を、鑑賞者と共有すべく、メロンの襞によって封印する。
MORI YU GALLERY (モリユウギャラリー)
http://www.moriyu-gallery.com
京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19
tel:075-950-5230