EXHIBITION | TOKYO
辰野登恵子(Toeko Tatsuno)
<会期> 2024年7月20日(土)- 9月7日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休 *夏季休廊:8月11日(日)- 8月19日(月)
ANOMALYでは、7月20日(土)より9月7日(土)まで、辰野登恵子展を開催いたします。
辰野登恵子が亡くなった2014年から10年がたち、今なお多くの関連展示が開催、予定されています。本展では、1994年に制作された大型のキャンバス作品を中心に展示いたします。パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に感動したエピソード1 や「ブルーは自分の色」とインタビュー2で語っているように、青は辰野にとって特別な色でした。このキャンバス作品とともに1970年代の初期作品から晩年の2011-2012年にパリの版画工房IDEMで滞在制作したリトグラフを含め、辰野の仕事にとって重要な役割を担っていた様々な版種と時代の版画作品を展示いたします。
1950年長野県生まれの辰野登恵子は、一貫して抽象表現の平面作品を制作、常に第一線で活躍してきました。東京藝術大学の油絵科在学中、柴田敏雄、鎌谷伸一とともにグループ「コスモス・ファクトリー」を結成、抽象表現主義全盛期の後で「キャンバスに筆で描くことが完全に古いと思われていた」3 時代に、アンディー・ウォーホルやロバート・ラウシェンバークから影響を受け、シルクスクリーンの版画制作からそのキャリアをスタートします。70年代にはグリット(格子)を用い、反復の中に差異を作ることによって新しい空間が出現する作品を制作、自身の作品に手応えを掴みます。80年代以降は、絵画的な秩序の中で制約しすぎることをやめ、「イメージの世界から来た」4丸や四角など単純で幾何学的な形の連続と強い色や筆触がせめぎ合う、有機的な油彩画やアクリル画を数多く発表しました。同時に、絵画の世界と往来するかのように、銅版、木版、リトグラフ、シルクスクリーンなど様々な版画制作に積極的に取り組み「並走する一方で、ときに、ある決定的な瞬間には前に飛び出して先導することも厭わない同伴者」5として、100点以上の版画作品を残しています。
「絵画でしか起こり得ない空間意識を持って、独特なものにしたかった。」6と語る辰野のつくりだす抽象的なモチーフは、現実世界の重力・引力に似せた図式を持ち、独自の絵画空間を我々の前に出現させます。抽象表現主義、ポップアート、ミニマルアート、ニューペインティングなどの潮流を冷静に観察しながら、絵画の在り方を探求し続け、独自のスタイルを確立した辰野登恵子とその作品を知る一端となれば幸いです。
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本文註:
1.「7章 − 未知なる布置をもとめて − 辰野登恵子」『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?』国立西洋美術館 2024年 p.222
2.「アーティスト・トーク 第18回 辰野登恵子」東京国立近代美術館 2008年11月14日収録
3.「インタビュー 辰野登恵子 絵画と版画の往還」『版画芸術』102号 1998年12月 p.69
4.『現代絵画の展望:平面と空間』(第18回現代日本美術展・企画部門)1987年 p.45
5.「インタビュー 辰野登恵子 絵画と版画の往還」『版画芸術』102号 1998年12月 p.66
6.「SAP ARTISTIC SESSION (1) 辰野登恵子×丸山直文『いまの絵について語ろう』」『セゾンアートプログラム・ジャーナル』4号 2000年9月30日 p.54
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