EXHIBITION | TOKYO
髙畠依子(Yoriko Takabatake)
「泉」
<会期> 2018年4月14日(土)- 5月19日(土)
<会場> ShugoArts
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
泉
何気ない日常の風景のなかで、とりとめのない表情を見せてくれる水。
ゆらゆらと揺れ、ぽたぽたと落ち、ぶくぶくと湧きあがる。
躍動する力強さに魅せられ、水と戯れた。
水面をキャンバスに、泡をつくり、色を重ね、空気を送る。水を使って水玉模様を絵描く。
地球の重力や月の引力といった目には見えない力とともにかたちをつくる。
大自然の中から湧き出した透明で清らかな水は、時の中を循環しながらこの世界の隅々まで染み渡る。
2018年2月 髙畠依子
シュウゴアーツは2018年4月14日(土)より髙畠依子の新作個展「泉」を開催いたします。
髙畠依⼦は 2014 年に東京オペラシティアートギャラリーのプロジェクトスペースでの個展によってその独創的な仕事 が知られ始めました。2016 年に博⼠号を取得した東京藝術⼤学⼤学院での三年間において、アニ・アルバース*の仕事を もっぱらの研究対象としつつ、他⽅では実制作において絵画そのものが織物であるかのような、絵の具を⽷のように垂ら して重ね、ときにはそれを⽣乾きのうちに吹き⾶ばす、というユニークな絵画表現を獲得している点が、画⾯の緻密なエ レガントさとでもいうべき作⾵とともに注⽬されました。今回の新作展では、これまでの到達点からさらに⼀歩踏み込ん で、絵の具を⽷のように垂らしつつも偶然性を積極的に取り⼊れた新たな試みが披露されます。
髙畠は今展覧会のタイトルを「泉」と命名しました。彼⼥の仕事場はいわゆる画家のアトリエとはどことなく異なり、 絵画をあたかも結晶体あるいは⽣命体のように⽣成しようとするかのような理系・⼯学的雰囲気があり、それは絵画⽣成 研究所とでも呼ぶべき新絵画創造の実験場 / ラボになっていると⾔ってもよいかもしれません。こここそが作品を⽣み 出す「泉」のような場所と⾔えるでしょう。かつてテキスタイルの世界にも魅⼊られた美術少⼥が、他⽅では絵画の歴史 に否応なく正⾯から向き合う受容の時期を経て、やがて⾃らの⽅法論を⾒出しながら今追い求めているテーマは、彼⼥の 作品の⼀⾒⼿を触れがたい繊細さとは裏腹に、実はとても壮⼤にして野⼼的なものです。
ポロックのアクション・ペインティング、ルイスのステイン・ペインティング、⽩髪のフット・ペインティング、⽥中 敦⼦の円を紡ぐペインティング、草間彌⽣の増殖するネット・ペインティング、単位の芸術としてのミニマリスム、ある いは彼⼥の師である⼩林正⼈の描きながらキャンバスを張るというペインティングなど、20 世紀後半にそれぞれに必然 性をもって陸続と⽣み出された⼿法・構造によって切り拓かれてきた絵画表現の地平を前にして、21 世紀の画家髙畠依 ⼦もまた独⾃の絵画表現のスタイル確⽴に果敢に挑んでいます。
今回展⽰されるのは、髙畠の旨とする「作り、壊し、また作る」という弁証法的な作法をベースに、偶然性を積極的に 取り⼊れた、しかしながら以前同様のエレガントさを備えた作品群です。偶然性の導⼊のための触媒として、⾵に続き、 今回は⽔や重⼒の働きを⽤いるに⾄ったのは、髙畠ならではの実験・思索・試⾏の積み重ねの成果でもあります。
この展覧会は髙畠頼子にとってシュウゴアーツにおける2016年に続く二度目の個展となります。髙畠依子というフレッシュにして本格的な芸術家の誕生に注目して頂き、貴メディアにて取り上げて頂ければ幸いです。
シュウゴアーツ 佐谷周吾
註 *アニ・アルバース(Anni Albers 1899-1994)バウハウスのテキスタイル科でパウル・クレーの後任として教鞭を取り、ナチの台頭著しい1933年に夫ジョセフ・アルバースとともに渡米し芸術活動を続ける。夫妻ともに優れた芸術家に して教育者としてアメリカのみならず後進のアーティスト達に⼤きな影響を与えた。髙畠は調査研究の⼀環として、 2015 年に⽶国コネチカットにあるアルバース財団に招聘され滞在した。
ShugoArts (シュウゴアーツ)
https://shugoarts.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6447-2234