EXHIBITION | KYOTO
藤浩志(Hiroshi Fuji)
「Jurassic Plastic」
<会期> 2019年6月1日(土)- 6月30日(日)
<会場> MORI YU GALLERY
<営業時間> 12:00-19:00 月火祝休
モリユウギャラリーは 6 月 1 日 ( 土 ) – 6 月 30 日 ( 日 ) まで、藤浩志「Jurassic Plastic」 を開催いたします。
MORI YU GALLERY では約 10 年振りとなる藤浩志の個展「Jurassic Plastic」を開催いたします。
藤が考案したおもちゃ交換システム「kaekko」(2000 年 – ) によって集まってきたおもちゃの中でも、交換されずに残り つづけたプラスチックの壊れたおもちゃや破片類。これら無視する事の出来ない素材の蓄積を用いて、藤は恐竜や鳥など のオブジェを制作し、現状を露呈しつつ価値転換をおこないます。
本展では、「かえっこ」の中でも選ばれず残り続けたおもちゃでつくったオブジェ「ToySaurus」やプラスチックの小さ な破片を集め色分けした集合体「Ginjo」の他、オブジェをもとに制作した新作平面作品などを展示いたします。
Jurassic Plastic
プラスチックの原料となる原油は、恐竜が暮らしていたジュラ紀の頃の生物の死骸が深い地層に沈殿し、地熱やバクテリ アによって分解され生成されたものです。 僕が生まれた 1960 年頃より世界中で石油化学工業は急成長し、1970 年代以 降プラスチック製品が激増。流通や商品、生活環境は激変しました。
1997 年、家庭内で排出されるビニプラ素材への違和感からすべて捨てずに洗浄し収集をはじめました。その活動から 発生したのが「かえっこ」です。
「かえっこ」では子どもたちが不要となったおもちゃを持ち寄り物々交換を行います。魅力的なおもちゃは引き取られる のですが、プラスチック類の壊れたおもちゃやファーストフードのおまけなどが大量に溜まり、現在も自宅の倉庫に増え 続けています。
これらのプラスチック類は世界中で大量に廃棄され、洪水などで河川に流れこみ、海洋全体に広がり海洋生物に大きな 影響を与えています。 1960 年に生まれ、数十年のうちに死にゆく僕の存在と、この素材の存在する時間が重なることも無視出来ないのです。 藤浩志
現在、藤の活動範囲は多岐にわたりますが、これまで一貫して、違和感や疑問といった藤自身が感じるもやもやとしたものと向き合い、 表現活動へとつなげてきました。そうした活動は、現代社会を単純に批判したり否定しているわけではなく、勿論、違和感や疑問を持 ち現状を深く直視する意思を持ちつつ、もっと複雑に状況と向き合っています。また、価値というのは常に揺るがされているもので、 その価値を異なる視点で捉える事の重要性を藤は十分に理解し実践しています。
それらは、「美術」という権威やシステムへの違和感を表明した大学院修了制作のハニワ(美術)とゴジラ(藤)のパフォーマンス上 演や、都市計画事務所勤務時代の給料 1 ヶ月分のお米 1 トンからはじまった「お米のカエル物語」、市民活動の挫折がきっかけとなり 制作した絵本「たけのはし」、 パプアニューギニア滞在中に価値観や常識を揺さぶられる数多くの体験などから生まれた「ヤセ犬」や「戦 闘機の十字架」「Cross?」、その後の「夢の鳥」といった作品に見てとれるでしょう。また、97 年に藤が家族とともに始めた、家庭内 から排出されるゴミを全て捨てずに収集するプロジェクト「家庭内ゴミゼロエミッション」は、後の「かえっこ」へとつながっていきます。
藤は、自身だけではなく他者も含め、より主体的に社会と関わっていく方法として「社会システムに絡む全く違うレベルでの表現手法」 を目指すようになります。地域社会を舞台に協力関係や適正技術を見極め新たなイメージを導き出す、OS(オペレーティング・シス テム)を生み出すという表現です。そして生まれたひとつのシステムが「kaekko」です。
「kaekko」は、藤が OS 的表現と呼ぶように、「仕組み」が作品であり、実体としてモノがあるわけではありません。作家の手を離れ、 地域へと拡散し、様々な活動(アプリケーション)が主体的に発生するという仕組みそのものを作品としています。
その後、「かえっこ」活動の蓄積の結果としてつくられた、大手ファーストフードチェーンのキッズ向けのおまけが中心になって構成 されたインスタレーション作品「Happy Paradies(ハッピーパラダイズ)」(2015 年 , 金沢 21 世紀美術館蔵)は一見、固定化され たアートピースのように見えますが、あくまでも固定化された空間作品として規定しておらず、そこから生まれる広がりを重視してい ます。本作品はアートピースでもあり、他者や空間が接続可能なアートツールとしての機能も有しており、さらに次世代に現在の時代 性を残し伝えるものとしてのアートドキュメントとしても提示されています。
活動が未来に対してどのような意味と可能性を持ちうるのか。藤は次のようにコメントしています。 「表現行為は未来に対して一歩を踏み出す行為です。」 藤の広範囲にわたる活動は、現代社会に対する自身の違和感から次の未来を創造するための一歩としての表現活動といえます。
ぜひご高覧ください。
「かえっこ」とは…
2000 年に福岡で誕生した「かえっこ」は、いらなくなったおもちゃを物々交換して「かえる」、つまり、不要品を循環させる仕組みを藤浩志 が考案し、全国各地の公共施設、学校、商店街、商業施設など数千カ所以上の場所で開催されてきた。
「かえっこ」の仕組みは使わなくなったおもちゃをカエルポイント(世界共通のこども通貨)によって交換するルールで、自発的なこどもた ちの自由な活動を地域の中で実施することができる。
「かえっこ」は運営主体となる人たちの目的によって環境教育、防災教育、広報活動、学校教育、販売促進など様々なアプリケーションを生 み出すしくみとして提案され、現在でも様々な現場で利用され続けている。
MORI YU GALLERY (モリユウギャラリー)
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京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19
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