EXHIBITION | TOKYO
エレナ・ノックス(Elena Knox)
「あざらし話」
<会期> 2023年6月3日(土)- 6月24日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休
ANOMALYでは、6月3日 (土) より6月24日 (土) まで、エレナ・ノックス 個展 「あざらし話」を開催いたします。
エレナ・ノックス(b1975-)は、デジタル・メディアやパフォーマンス、立体、音楽、インスタレーションなど様々な表現形態を用い、われわれの人間社会に潜む問題を掘り起こし、その姿をユーモラスに、そしてアイロニカルに作品として提示するアーティストです。
国内における発表は2019年「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命 – 人は明日からどう生きるのか」(森美術館、東京)での人間型ロボット(アクトロイド)と人間が演じる老いをテーマにしたビデオ作品《Pathetic Fallacy(感傷的虚偽)》、2020年「ヨコハマトリエンナーレ」(神奈川)でのセックスレスのエビのための観客参加型のプロジェクト《ヴォルカナ・ブレインストーム(ホットラーバ・バージョン)》、そして昨年2022年には「ICCアニュアル 2022 生命的なものたち」(NTTインターコミュニケーション・センター、東京)において、ホログラムとして表示されるAIキャラクターとノックス自身との関係を進行形で鑑賞できるインスタレーション《The Masters》を発表しました。
ノックスのANOMALYでの初個展となる本展では、昨年「大地の芸術祭 越後妻有2022」で発表した、コンパニオンAIロボット「パロ(*1)」と7チャンネルの映像で構成されるインスタレーション《あざらし話》を再構築いたします。
《あざらし話》でノックスは、人の心を癒すために開発されたタテゴトアザラシのAIロボット「パロ」と共に、東京から北極圏までの長い旅にでました。近代化以降、人々の営みによりオゾン層は破壊され、「地球温暖化」は深刻化の一途をたどる中、北極圏で強烈な日差しに晒される生身のアザラシたち、刻々と溶けゆく北極圏の氷、そんな状況を目にするロボット「パロ」は何を思うのでしょうか。そして「パロ」とノックスの旅を通してその変わりゆく世界を見るわれわれは何を感じるのでしょうか。
科学、物語、地元の人々との交流、気象データを融合させたこの《あざらし話》では、人間、環境そして機械(ロボット)の関係性と、感覚的な現象を理論化するメディアとしての存在をパロの中に見出しています。
エレナ・ノックスは、本作のような社会問題を積極的に扱った作品を制作しますが、彼女の作品の特徴は、その問題の構造の解体を試み、歪さを露出し、その結果鑑賞者に(当たり前だと思っていた) その構造に違和感を生じさせ、複雑な感情を抱かせるところにあります。例えばジェンダー問題を扱う際には「女性の地位向上」、「性差別反対」といった標語化/表象化を行うのではなく、女性に(社会が)与えている「記号」を解体する作業を行います。人間が創り、手に負えなくなったそのシステムの解体を、同じく人間が創りしロボットやテクノロジーを多用して試みるのです。
また本展では、コロナ発祥の地と言われる中国・武漢の廃墟となったホテルのプールで撮影した作品《Chinoiserie (ode to Wuhan)》(2019) も併せて国内初公開いたします。本作では発展著しい同地の、新旧入り混じる混沌とした中国社会が捉えられ、建物の外からは人々の生活の有様が聞こえる中、映像は進行します。《あざらし話》での北極圏での映像と併せ見ることで、「発展」という名のもとに行う人間の行為の虚しさも感じることでしょう。
既存のシステムが綻びをみせ、従来の価値観が揺らぐいま、多角的で開かれた視点をもち、重層的なコンセプトを忍ばせるエレナ・ノックスの世界をお楽しみください。
ANOMALY (アノマリー)
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