EXHIBITION | TOKYO
鷹野隆大(Ryudai Takano)
「光の欠落が地面に届くとき 距離が奪われ距離が生まれる」
<会期> 2016年11月26日(土)- 12月24日(日)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
今回の新作で鷹野が取り組んだのは都市を行き交う人々の影です。街角の地面や壁に映し出されるそれらは、平面に穴を穿つかのように奥行きを生み出します。人の眼が認識する間もなく消え去ってしまうこれら影の連なりを、カメラを用いて像に定着し、そこに現れる距離を確かめようとしたのが今回の作品です。それは、平面上に描き出されたものを被写体とする点において、写真の複写に近似した行為とも考えられます。と同時に、これまで身体と都市をそれぞれ別個にテーマとしてきた鷹野にとって、都市の人影を被写体とした今回の作品は、その両者をつなぐ新たな試みとも言えるでしょう。
また本展は、NADiff Gallery での個展「距離と時間」と同時開催いたします。あわせてご高覧いただけましたら幸いです。
■ 作者コメント
5、6年前のことだろうか、地面に落ちた蝶を撮ろうとかがみ込んでいたときのことだった。ファインダーの中が急に暗くなった。ん?と思ってカメラから眼を離すと、人の影だった。
僕は体を起こして、その影が通り過ぎる様子をぼんやり眺めた。そのときだった。地面が透明なスクリーンになってスーッと奥行きが生まれるのを感じた。影が立体物のように見えたのだ。それは上下反転した世界だったが、僕も自分の影を通してその反転した世界の住人になっている感覚があり、違和感はなかった。
あのとき僕は何を見ていたのだろう。それは水面に映る景色のようでもあったが、決定的に異なるのは、僕の焦点は地面に固定されたままだったことだ。水面の景色は、水面に焦点を合わせたままでは見ることが出来ない。
影は光が届いているところと欠落したところとを同時に見ることで現れる。影の部分を見ただけでは現れない。その激しい明暗の落差が、僕の眼が捉えていたはずの地面とは別のものを見させたのかもしれない。
モノクロのネガフィルムにおいて、影は銀の欠落として表現される。その意味で、影は反転したネガの世界と見事な相似形を成している。影は、写真の原初的な形態のようでもある。
いずれにしても、影が生み出す距離を確かめようと、あれ以来僕は繰り返しシャッターを切っている。
鷹野隆大 2016年11月
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツビューイングルーム新宿)
http://ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731