EXHIBITION | TOKYO
金田実生(Mio Kaneda)
「耳のなかの竜巻」
<会期> 2024年12月14日(土)- 2025年1月18日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休 *冬季休廊:2024年12月29日(日)- 2025年1月6日(月)
ANOMALYでは2024年12月14日(土)から2025年1月18日(土)まで、金田実生 個展「耳のなかの竜巻」を開催いたします。
金田実生は1980年代後半から作家としてのキャリアを版画でスタートさせ、その後、紙を支持体にした油彩画を中心に制作の幅を広げ、水溶性クレヨンや木炭など、様々な素材を用いた表現方法を取り入れながら制作を続けています。彼女の作品は、身近な風景や日常のささやかな出来事に宿る光、温度、湿度、空気、音、気配といった、目には見えない現象をも繊細に捉え、それを画面上へと定着させています。有機的な線や形、丹念に塗り重ねられた色彩は、視覚的な快感をもたらすと同時に、鑑賞者の心の中に潜むイメージを静かに呼び覚まします。ANOMALYで初個展となる本展では、昨年から今年にかけて日々の気付きから生まれたキャンバスと大型の紙作品合わせて約10点を展示いたします。
本展のタイトル「耳のなかの竜巻」は、金田が最近体験した印象的な出来事に由来しています。夜明けの散歩中に竜巻のような強い風が耳の中に入り込み風の形を感じた瞬間でした。この不思議な体験を通じて気候変動や自然災害など、地球のどこかで日々起こっている自然現象の力と、自身の中で湧き上がる、そのイメージとが繋がったと語っています。
金田は自身の絵画について、「見えないけれど確かな存在、目に見える存在、そして画面上で現れる存在、この3つの関係性を考えている」と言います。彼女の制作は、目で見たもの、全身で感じたもの、頭で想像したものを重ね合わせる作業です。例えば、本展出品の大型の紙作品《橙色の爆発》は炎をモチーフにしていることがうかがえます。そしてさらに、金田の繊細な色と筆致によって、夜の闇の中でより鮮明に感じられる目に見えない「温度」という確かな存在があらわれています。また、いくつか描かれている星のような造形は、金田の作品に度々登場する象徴的なモチーフで、この突然出現する非現実的なかたちが、現実的なモチーフと混在することで、絵画ならではの緊張感と独特の面白さが生まれています。
最近の作品では、具体的に認識できるモチーフの存在が多くなったように見受けられます。これは、金田が絵具や筆の質感、タッチといった「物質性」と、描きたいものの「イメージ」のどちらかを優先させるのではなく、その両者のせめぎ合う関係性をより深く意識するようになったことに起因していると考えられます。金田にとって、描くことは常に「考える」ことであり、幾重にも重ねられた彼女の思考と実践の結晶である作品を前にすると、普段見過ごしていたみずみずしい世界の一端を垣間見ることができるのではないでしょうか。
進化し続ける金田実生の新作群をぜひご高覧ください。
アメリカのインディアン、ポーニーが河川を歩く際に唱える祈りがある。その「風への祈り」は、足を水につけ、その冷たさが「体のぬれたところだけ感じられるとき」、「体のあちこちに感じられるとき」、「皮膚の全面に感じられるとき」に分かれるそうだ。そうして自然の秩序を確かめて祈り、安全に歩を進め、生きるための注意を払う。
私はこの祈りについての記述を読み、冷たさの差異を思い浮かべた。みっつの「冷たさ」は、経験に訴える確かな状況をあらわし、その違いを明確に伝えている。自然に対する知識を示しながら詩的とさえ思えるこの「冷たさ」の類別は、場合によっては文学や記録を彩る言葉にもなろうが、なによりも彼の地で暮らす人々にとって必要な、切実でありのままの写実表現なのである。
生きるために必要な表現を確かな形で絵画にあらわすことができるのだろうか。毎日受け取る自然の秩序を感じながら進んでみる。
(参考資料:野生の思考 クロード・レヴィ=ストロース) 金田 実生
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