EXHIBITION | TOKYO
藤本由紀夫(Yukio Fujimoto)
「Yukio Fujimoto Sound Album」
<会期> 2020年8月1日(土)- 8月31日(月)
<会場> ShugoArts
<営業時間> 11:00-18:00 日月祝休
70年代、電子音の合成による大音響の作品制作を続けているうちに2つのことが気になるようになった。1つは、どれだけ波形を複雑に組み合わせても、どれも同じような音にしかならないこと。そしてもう1つは、大きな音は、最初に体験したときが一番面白く、2度、3度と聞くと、その音量に慣れてしまい、急速に刺激が薄れていくことであった。
このような不満から、80年代に入ってシンセサイザーを使うのをやめてしまった。すると、それまで気にも留めていなかった日常の音が面白く聞こえてきた。本のページをめくる音、コップをテーブルに置く音、服の擦れる音、自動販売機から飛び出るコインの音……それらの「何でもない」音はけっして人工的に波形を合成して作れるような単純なものではなく、非常に密度の濃い内容を持っていたのだ。そして、それらの音のほとんどは小さな音であるにもかかわらず、それぞれが個性を持ち、環境に対し生き生きと主張しているように聞こえた。
藤本由紀夫
初出:藤本由紀夫「音が創る音楽―サウンド・ミュージアム」(『生命誌』通巻11号, JT生命誌研究館, 1996年1月, 14-15頁)
藤本由紀夫は日常に潜む様々な「音」とそれを認識する過程で音の連続を「音楽」として組み替える我々の認知能力への気づきを起点に、早くも80年代初頭からレディメイドのオブジェ、空間、人との関係を捉え直し、「音を出す」行為から「音を聞く」行為へとその制作を転換させてきました。
『Yukio Fujimoto Sound Album』と題したシュウゴアーツオンラインショー第三弾は、1980年から2020年まで40年間に及ぶアーティスト活動の足跡を一枚のアルバムにまとめ、藤本由紀夫の「音」の原点を探ります。SIDE A「music boxes」では、藤本の空間や音の認識を変える契機となったオルゴールを用いた作品を中心に、今回シュウゴアーツにて撮り下ろした作品映像およびオルゴールの代表作のサウンドを映像とともにお楽しみ頂きます。SIDE B「fragments 1980-2020」では、1980年から2020年の間にVHS、8mm、Digital Video、iPhoneと異なる撮影メディアによって作家自身が撮影し、今展を機にデジタル化した映像群を本人の編集により収録しました。一人ユニット「Normal Brain」として音楽活動をしていた80年代前半の貴重な映像作品や、美術館でのサイトスペシフィックなパフォーマンスなど、バラエティに富みアーカイブとしても重要な内容です。いずれも8月1日よりオンラインにてコンテンツをご覧頂けます。作家本人による解説とともにお楽しみください。
『Yukio Fujimoto Sound Album』プレイリスト
revolution & gravity
00. prelude
01. rock salt, 2019
02. solar salt, 2019
03. 9 marbles, 2019
04. rock sugar, 2019
05. moss & rock salt, 2019
06. artificial flower & glass ball, 2018
07. separation & conjunction (book end), 2019
08. STARS, 1990
09. The Music (Four-Panel Folding Screen), 2013
SIDE A「music boxes」の各作品はこちらのオンラインカタログで詳細をご覧いただけます
01. GIRL, 1980
02. M-U-S-I-C, 1980
03. YOU ARE BUSY, I AM EASY, 1980
04. CALCULATOR MUSIC, 1986
05. TARUPHON, 1988
06. UNDR, 1992
07. NEWLYN ART GALLERY, 2002
08. MUSIC DUST BOX, 2008
09. BROOM(Coal), 2012
10. PET, 2015
11. on the circle otani, 2020
ShugoArts (シュウゴアーツ)
https://shugoarts.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6447-2234