EXHIBITION | TOKYO
藤本由紀夫(Yukio Fujimoto)
「STARS」
<会期> 2017年12月2日(土)- 2018年2月3日(土)
<会場> ShugoArts
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休 *年末年始休暇:2017年12月28日(木)- 2018年1月8日(月)
藤本由紀夫は 1950 年に名古屋市で⽣まれ、2001 年と 2007 年にヴェニスビエンナーレに出品、同年に国⽴国際美術 館、⻄宮市⼤⾕記念美術館、和歌⼭県⽴近代美術館にて同時個展を開催するなど、関⻄を中⼼に国際的な活動を続けてい ます。
70 年代を⾳楽スタジオで過ごした藤本は伝統的な美術表現の外からやってきたアーティストです。「⾳とモノ」を出発点とし聴覚、視覚、嗅覚、触覚を喚起する独創的な作品の数々を制作してきました。
藤本は幼少期より⾃宅で⽗親が使わなくなったカメラ、映写機、オープンリールのレコーダーなど 50-60 年代に最先 端であった機器をおもちゃ代わりにして過ごしました。遊びの延⻑でテープの⾳を切り繋いだり、ラジオのノイズを録⾳していた経験は、後年当時としては珍しく全室スピーカーの設備が備えられた⼤阪芸術⼤学の電⼦⾳楽のコースへ進むきっかけでもありました。電⼦⾳楽もアナログからデジタルへの移⾏期を迎える頃「スピーカーから発する⾳が全て等質に聞こえる」経験をした藤本はやがてスタジオを出ます。そして再び⾃宅で藤本が⾒つけたものはおもちゃのオルゴールでした。⼤きな⾳を作ることから⼩さな⽣の⾳を聞くことへの転換における新鮮な驚きと共に、⾳とは共鳴する空間そのものである、という気づきはその後の制作に⼤きく影響を与えます。また幼少の頃よりそうとは知らずに印象付けられてい たマルセル・デュシャンの世界に⾜を踏み⼊れ、さらにジョン・ケージを⾒直し検証するに⾄ったのもこの時期のことで す。
1990年には目に見えない空間の中に存在している気配や振動を聞く装置、EARS WITH CHAIRを発表しました。二本の長いパイプの筒を通して耳の形を変形させたような状態で、通常気が付かないで過ごしている周囲の音が増幅されて聞こえてくるこの作品は、オルゴールやパイプのような大量生産されたレディメイドを用いる一方で、作品を通じて発見されうる外界への新たな認識手段を干渉社それぞれの感覚へ委ねると言う藤本作品に共通する態度が窺えます。
2011年に始まったTHE MUSICはシェーンベルクの十二音技法に基づき、反転、逆再生、iPhone アプリによる偶然性などの要素によって4つの面に36個のオルゴール音をとりつけたもので、鑑賞者が演奏することで成立します。
2016年にシュウゴアーツ・ウィークエンドギャラリーで開催された展覧会では、レコード盤上に石炭が敷き詰められ、鑑賞者がその上を歩くことで音の演奏者になるBroom (Coal) のインスタレーションが好評を博しました。
今展では 54 個のオルゴールが 1 ⾳ずつ⾳を奏でる代表作 STARS(1990 年作)を新しいシュウゴアーツの空間において配置します。タイトルの STARS は夜空に浮かぶ⼀つ⼀つの星をつなぎ合わせ星座の物語を作った⼈間の視覚認識に基づいており、1 ⾳ずつランダムに発⽣する⾳を頭の中で和⾳に構成しなおし、パターンやメロディーとして聞かずにはいられない⼈間の聴覚の可能性を⽰唆します。世界を⽣成し、存在させているのは他ならぬ私達⾃⾝であるのかもしれませ ん。さらに新作の展⽰を含め、東京で藤本由紀夫作品を体感する貴重な機会となっておりますのでどうぞご期待下さい。
シュウゴアーツ ディレクターズ 2017年10月
星(STARS)
夜空をカンバスとする星々は、それぞれ規則的な運動をしている。しかしそれらの規則的な運動をする星達が⼀堂に会した天空は、ランダムな点の集合体にしか⾒えない。この天空の時計装置を読み取るために古代の⼈々は、特徴ある星と星を結び、具体的な形を創造し記憶に留めた。つまり、星座は星空に存在するのではなく、それを⾒る⼈が、⽬に⾒えるものから「創造」したイメージなのである。 「星(STARS)」は、⾳を空間に点在させ、それを聞く⼈が、⾳と⾳を結びながら、それぞれの⾳のパター ン(⾳楽)を作りだすことを⽬的に制作された。⼀つの星に相当するのがオルゴールの⼀⾳である。54 個 のオルゴールは、それぞれ⼀⾳のみ発⾳する。⼀つ⼀つのオルゴールは、それぞれ規則的に⾳を出しているが、すべてが鳴り響く空間では、ランダムな⾳の集合となる。そのような音の空間にたたずむと、我々は星座を作りだすのと同様に、音と音をつなぎ合わせ、特徴のあるフレーズを知らず知らずに作っている。
記憶に留められた音は、時間軸上に配列され、メロディの断片として知覚される。と同時に、その音のパターンは、空間を結ぶ線によって出来上がるフォルムともなっている。ここでは、時間の体験と空間の体験が同時に行なわれているのである。聞く人の耳によって。
YUKIO FUJIMOTO
objects, installations and performances
西宮市大谷記念美術館, 1998
ShugoArts(シュウゴアーツ)
https://shugoarts.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6447-2234