EXHIBITION | TOKYO
若江漢字(Kanji Wakae)
「視程」
<会期> 2016年5月13日(金)- 6月11日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2016年5月13日(金)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、若江漢字の個展《視程》を開催いたします。
写真の機能というのは世界を検証していく要素を持っているわけです。カメラは、1つのメジャー(定規)なのです。どういうことかというと、実測し直すというか計り直す、つまり、事物を検証するということは世界を測定し直すことなのです。
ー若江漢字「ユミコチバアソシエイツ刊『1970年代へ 写真と美術の転換期』(2013)
光田由里×植松奎二×若江漢字 スペシャルトークイベント」より
1960年代後半よりメディアに捕われない幅広い活動を続けている若江は、早くから「記号性」や「表示作用」といった、記録性だけではない写真の機能的な側面に着目し、現代美術の文脈上でそれを巧みに用いた作品を発表してきました。
撮影の対象となる事物そのものと写し出されたイメージを一枚の写真として並列することで虚像と実像の、境界を探る作業や、被写体の大小のサイズを視覚条でコントローする仕掛けは視覚認識のズレを生じさせ、観者に「見ること」の曖昧さを問いかけます。そうした作品を前にした時、私たちの視点は定まるところを失い、人間の持つ可視性がいかに脆弱であるかが暴かれるのです。
このような作品制作の背景には、固定化されている現実認識に対する懐疑を常に持ち、写真を通して「見る」という行為を検証し、いかに世界を測定し直すことができるのかという若江の一貫した態度が伺えます。
本会場では、事物と写真のイメージが併置され、空間そのものが作品となります。併置されているそれらは視覚的、意味的に相互に関連しあい、観者はその関係性を手がかりに作品を注視することで、普段何気なく見過ごしてしまう事物自体の「存在」についての思考を促されることでしょう。
尚、本展の開催に合わせ、若江漢字と美術批評家・沢山遼氏によるトークイベントを開催いたします。是非ともご参加ください。
■ 作家コメント
前回(2013年)の《鏡界》と題する写真と絵画の個展では、ミラーリンク−反転・鏡像化−似かよった図像が反転、並列するような写真作品と絵画から鏡の存在が暗示される−鏡にちなんだ作品類による混成の展示だったが、今回の《視程》では久々に写真作品のみの展示となる。
展示の中心となるフォトオブジェクト(写真と物の組合せ作品)『大きさについて』の初出は、1983年ドイツ滞在中(文化庁在外研修)に北ドイツ・ヴォルフスブルク市立美術館の『平和』展となるが、このとき出品したのが第一作で帰国後に東京国立近代美術館での『現代美術における写真』展のために担当学芸員から”この作品で”と指定されて出品した近美バージョンと合わせて二作がある。
そして今回、最初のアイデアであった測量器を被写体とした作品が3度目にしてようやく日の目を見ることとなった。
個展タイトルの《視程》は、霧や靄の濃さの度合を観測する折の気象用語で、私はその言葉を作品を見る人の肉眼が目標に到達し、思考を誘発するその思惟の尺度といった意味合いで採用している。
『大きさについて』のコンセプトは、風景の中に球体を置いて撮影した、70年代初期からの『見る事と捉える事』シリーズに連なるもので、物の大きさ、つまり大小を判断する基準が人それぞれの成長時に獲得された極めて個人的な体験に依拠するあいまいなものでしかないとの思いが制作の動機となっている。
他の展示作品は、ヴァイオリンを使った『大きさについて』(ヴィオロン)と写真2枚を一組とした Black Box Camera シリーズの新作8〜10点、80年代の旧作の再制作による水に関する設問としての作品から3点、球体シリーズから6点、その他3点程の24〜5点の構成となっている。
写真は常に視る事の不思議をつきつけている。
若江 漢字 2016年4月
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツビューイングルーム新宿)
http://ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731