EXHIBITION | TOKYO
築地仁(Hitoshi Tsukiji)
「写真像」
<会期> 2017年2月25日(土)- 4月1日(土)
<会場> Taka Ishii Gallery Photography / Film
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、2 月 25 日(土)から 4 月 1 日(土)まで、築地仁個展「写真像」を開催いたします。築地は 1960 年代半ばより都市を舞台に、被写体やテーマに依拠した写真の抒情性を排し、鋭敏な眼差しで写真表現の本質を探究してきました。本展では、1984 年に上梓した作品集『写真像』掲載作品より約 20 点を展示します。
わたしは、写真=蔵のアーキタイプを撮る。(……)時間と空間を断絶し、一葉の表層への定着。写された都市の質感と力動する肌理。光の波動、影の輝き。わたしは、写真に〈撮ること〉〈つくること〉〈考えること〉の厚みを光と影に還元する。(……)写真が、ただ、写真として存在している場をつくりたい。(……)写真は被写体の意味に従属するものではない。イメージそのものが起立する場である。
築地仁、「言葉」、『築地仁 写真』、日本写真企画、2015年、n. p.
欧米の写真動向に多くを学んだ築地は、被写体の歴史性、物語性、出来事性に頼り、それらを説明・描写することに力を割く情緒的な写真のあり方に異を唱え、写真独自の表現意識の問題に切り込むべく、1975 年に『垂直状 の、(領域)』を自費出版しました。写真にはごく限られた範囲の事象しか写す事ができないという認識の下まとめられた作品群は、その限られた中でいかに世界を見、また気付くことができるかという写真意識の提示への関 心と意欲に溢れており、事物の波動に対する写真家の眼の反応が、両観音開きという特異な写真集の形状において円環の形で記録されています。
折りしも 1970 年代後半には、「自分たちの時代の自分たちの写真」を求めるポスト・プロヴォーク世代の若い写真家が、ギャラリーや同人誌など独自のメディアを自主運営することで表現の模索を行っていました。1979 年に築地は、新宿に興った自主ギャラリー、フォト・ギャラリー・プリズムを通じて知り合った写真史家・金子隆一や写真家・島尾伸三、谷口雅と共に、自分たちを含めた写真集シリーズを刊行する「場」として CAMERA WORKS を設立しました。しかしその企画は実現を見ず、差当たりの小冊子として『camera works tokyo』を発行します。当初、写真理論の翻訳と注解をメインとしていた小冊子は、やがて自分たちの写真を掲載するだけでなく、次世代の写真家たちの作品を包含することにより、写真意識の啓蒙をより実際的な行為へと変換させました。後に「インディペンデント・フォトグラファーズ」と呼ばれる、自主ギャラリーやミニ・マガジンで活動した写真家の多くが、写真表現の依って立つ根源への遡行の過程で方法論を先行させ、結果として表現のスケールを狭めていっ た中で、築地は CAMERA WORKS での論理的実践や当時日本に広く紹介された構造主義理論を背景に、自身の制作においても論理的思考を強め、1984 年に写真表現の「構造」に焦点を当てた作品集『写真像』を発表します。
わたしが「写真像」で求めたことは、写真の「構造」をあきらかにすることです。その「構造」とは、わたしがうつした、被写体の性質と内容、光と影、質感とディテール、現実、現場、現在がくみあわされた、写真表現の薄い皮膜のような層のかさなりです。(……)「写真像」では、私の写真の表現の「構造」の断面をあきらかにすることを重要なコンセプトにし、そこから見えてくる、写真のもつ思考の構造と意識の本質を図示したいと考えています。
築地仁、2016年12月
都市を彷徨い、透徹した眼差しと優れた技術を以って6×6カメラで捉えられたイメージには、抑制の効いた明暗や質感、構図に独自の美が宿り、精緻な銀塩プリントの形・量・質・色による「物」としての表現がより一層際立っています。被写体から感じる感覚の質感(クオリア)、世界の構造の主体的な認知、写真の「いま、なぜ、ここに」、記号の揺らぎやずれに浮き上がる写真の美の関係性と心的構造――写真の純粋なエキスの図示を目指した本シリーズは、まさに築地にとって、写真による写真の本質そのものの表明であったと言えます。
Taka Ishii Gallery Photography / Film(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム)
https://www.takaishiigallery.com/jp/
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
tel:03-5575-5004