EXHIBITION | TOKYO
福永大介(Daisuke Fukunaga)
「醗酵される時間」
<会期> 2024年11月16日(土)- 12月14日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
「醗酵される時間」
アトリエにある茎から刈り取られた水の無い水差しに活けられた鶏頭(ケイトウ)。日に日に頭をひしゃげてただれ垂れる花弁。山吹色が抜け落ちて褐色になって縮んでゆく。その隣には殻殻な可憐な藤色が時が止まった様に枯れ咲いてゆく。
福永大介
この度小山登美夫ギャラリー六本木では、福永大介展「醗酵される時間」を開催いたします。
本展は作家にとって弊廊における4年ぶり7度目の個展となり、新作ペインティングを発表します。
【福永大介と作品について
-路地裏、モップ、はたらく人物の多幸感と物憂げな存在性】
福永大介は1981年東京生まれ。2004年多摩美術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業し、2009年第1回絹谷幸二賞を受賞。現在は東京を拠点に制作活動を行い、特に近年は、2022年Nonaka-Hill(ロサンゼルス)、Antenna Space(上海)、High Art(パリ)と、海外での個展を開催、国内外で精力的に活躍をつづけています。
福永は制作初期より、路地裏、バックヤードなどに惹かれ、モップ、タイヤ、バイクシート等忘れられがちなものへの独特な存在性を見出してきました。それらが生き生きと見えた時の自らの感覚をドキュメントするように描き、静かに佇むそのものたちはまるで感情を持つように凛々しく崇高な姿を表しています。
そして2020年弊廊での個展にて、「はたらきびと」が休憩している様を描いた作品を発表、大変好評を得ました。労働者の社会的な姿と、休憩中リラックスして個性が現れる様子のコントラスト。耽美的で気品あり物憂げな表情やポーズは、不思議な多幸感と暗さに満ちています。
独特な画面の揺らぎと、青、緑、紫、ピンク、オレンジなどの淡く鮮やかな色彩、無国籍な背景が画面に虚構性をもたらし、濃密で独創的な世界観を展開してきました。
本展の新作は、2020年の個展につづく、はたらく人物を主題とした作品ですが、その世界観はさらに醸成していきます。植物が枯れてドライフラワーになってまた輝きを放つなど、時がもたらす変化を作家自身の姿にも重ね、はたらきびとが労働から解放、分解されて、何かが生成されるような「醗酵される時間」や様子が描かれています。
【本展および出展作に関して
-労働から解放され昇華した「醗酵される時間」人と花の儚さと輝きある人生観】
新作「Rising」は、労働者が休憩から立ち上がるような、「これから起動する感じ」が描かれています。ヘルメットの紐は艶かしく顔にかかり、アンニュイな視線やモデルのようなポーズ、背景の優美な花々と海外のような街並みはまるでその状況を作り込んでその一瞬を捉えたかのようで、実際は誰からも見られることない労働から解放された景色が、アーティスティックな瞬間に昇華されています。建物群は、実際は作家の生活圏にある物であり、ヨーロッパ風の新興建売住宅です。
「Thoughts in the hole」は、外界を遮って物思いに耽るような、比喩的な意味での穴の中のイメージです。人物はヘルメットをかぶって手を組み、暗闇の中でまるでもう直ぐ眠りそうな安らぎも感じさせます。
「労働者の眠り=精神的活動の姿を花のように美しくみせること、それが福永の芸術的態度であり、ただそれだけのことが、彩度の高い現在性を生み出している。そして、花はヴァニタスにおいて時間の有限性を示すものであるように、休憩中にある労働者たちにも儚さが存在している。これが福永の作品に含まれるメランコリーの正体だろう。この儚さには、うっすらと死の匂いが漂っているように思える。」
(石川卓磨「特権的な眠り」月刊アートコレクターズ、2021年)
福永の絵画における挑戦は、労働というテーマから現代の日本においてどのように人物を描くかという大きな可能性を広げ、重要な提示をしていると言えるでしょう。年齢が上がることで感覚の変化が、人と花の盛りを過ぎてもなお輝き続ける人生観とも重なっていく福永の新作。ぜひご高覧ください。
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225