EXHIBITION | TOKYO
福永大介(Daisuke Fukunaga)
「はたらきびと」
<会期> 2020年11月7日(土)- 12月5日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
この度小山登美夫ギャラリーでは、福永大介展「はたらきびと」を開催いたします。本展は作家にとって当ギャラリーにおける5年ぶり6度目の個展となり、新作ペインティングを発表いたします。
【福永作品について
– ありふれたものの存在性、自らの感覚をドキュメントするように描く – 】
福永は、バイトでの労働中や、散歩している時にふと見かけるモップ、タイヤ、ホイール、バイクシートなど、身近にありながら忘れられがちなものに「何とも言えない彫刻作品」のような存在性を見出します。それらのものは、置かれた環境の変化や時間の経過、光のあたり具合により、本来の用途から抜け出した「もの」としての存在感が際立ち、生き生きと日々変わって見え、作家はそれを見た時に感じた自らの感情、情緒、感覚をドキュメントするように絵画にしていきます。2015年の前展では、その自らの視点は「まるでネコが当ても無く彷徨いひっそりと何かを見つめているよう」だと表現しました。
美術評論家の椹木野衣氏は、福永の絵画に対し次のように評しました。
「福永の絵の遠い起源は実は高橋由一にある。由一の絵が明治の黎明で後に力を持つ黒田清輝や浅井忠よりも、今なおはるかに見るものへの訴えかけを持つのは、それが技法や手法ではなく、<何故だかそこに在ることへのおそれ>を画布に写す(移すのではなく)ことに徹底して執着していたからにほかならない。」
(椹木野衣「焼き豆腐の在る台所と使用済みのモップのあいだで」、福永大介展覧会カタログ、小山登美夫ギャラリー刊行、2008年)
また特徴的なのは、描かれるそれらのものが、感情や表情、人格を得たかのように擬人的に表わされており、静かに佇むその存在は凛々しく崇高ささえ感じさせることです。
そして画面の中の空間は特殊な磁場か重力がかかっているかのようにゆがんで見え、また、実際の環境とは大きく異なるであろう青、黄、緑、紫、ピンク、オレンジなどの淡く鮮やかな色彩が、豊かに配されています。それにより現実的なものが描かれているはずの画面に虚構性が入り込み、ミクロな視点から捉えた濃密で独創的な世界観が大きなキャンバスを超えて躍動的に展開していきます。
【本展の新作について
– 「はたらきびと」の心象世界と生きる力】
本展の新作は、2011年の個展以来の、人物を主題とした作品となっています。作家の「自身の身近な体験からインスパイアされたイメージの中には、『人物』が含まれている」という気づきから、いくつかのバイトで働いていた場においての、自身も含めた「働いている人々」を描いています。
本展に際し、福永は次のように述べています。
「労働をしている最中はその職業人としての動きが表されるが、人間の基本的な寝ているポーズや歩いているポーズなどは労働に携わっている中でもその人物のパーソナリティーが現れているようで興味深いと思う。社会的役割としてのパーソナリティーと個人としてのパーソナリティーが共有されている様が魅力的に思う。
いうまでもなく人は何かしらの職業があって何かしらの労働をしている。もちろん絵を描くこと、芸術作品を作ることも労働という事ができる。一見何も生み出していないように見える状態でも労働をしていると言えるかもしれない。そうした意味においては労働というモチーフはかなり可能性と自由が拡がっていると思った。」
描かれている人物は、それぞれ物憂げだったり、休憩を楽しんでいるように見えますが、いずれも描かれた人物特有の心の奥底に深く踏み入るような、
心象世界が画面いっぱいに広がっているようです。
人は何かしらの職業があって何かしらの労働をしている。労働と生きることは密接につながっており、作品からは「はたらきびと」の根源的な生命力や存在性も感じられるでしょう。福永の新たな挑戦をぜひご覧ください。
TOMIO KOYAMA GALLERY(小山登美夫ギャラリー)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
tel:03-6434-7225