EXHIBITION | TOKYO
Ayako Someya , 小林真由香(Mayuka Kobayashi), Haru Yamaguchi , 日野公彦(Kimihiko Hino), 宮村弦(Gen Miyamura), 矢野童観(Doukan Yano), 山本尚志(Hisashi Yamamoto)
「現代アート書道の世界2【記号と今】」
<会期> 2020年2月8日(土)- 3月7日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2020年2月8日(土)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjukuでは、書家 Ayako Someya、小林真由香、Haru Yamaguchi、 日野公彦、宮村弦、矢野童観、山本尚志の展覧会、「現代アート書道の世界2【記号と今】」を開催いたします。
2017年に行われたグループ展「現代アート書道の世界」から早くも3年が経ち、その間に我々書道家たちは、ささやかながら注目を集め始め、国内各地のコマーシャルギャラリーからデビューを果たす人間が十数人も出るという飛躍を遂げました。
その中で何度も話題として上がったのが、われわれ現代の書道家は「一体なぜ、何のために文字を書いているのか」ということでした。
西洋近代絵画の歴史の中で、文字を作品の中に登場させた作家は何人かいます。昨年日本で大回顧展のあったジャン・ミシェル・バスキアもその一人でしょう。まだ黒人差別の根強かった80年代のニューヨークで書かれたそれらの文字群は、彼の叫び声そのものを表していました。
その「叫ばずにはおれない心の動きを、文字で書いて表すこと」は、無論書道の世界でも古来より行われていたことです。例えば中国の顔真卿は、安禄山の戦いで親族を失った悲しみをその手紙「祭姪文稿」の震え昂る文字群に表しました。
黒人差別問題や戦乱での悲痛な声ならぬ声。彼らには彼らの文字を書く理由があり、それが腕を伝ってほとばしりとして、それぞれに表出したわけです。
現在の我々を振り返って、さて、彼らに匹敵するような、そんな大きな理由があるのかどうか。しかしながら、ここにいる現代の書道家たちは、やはりそれぞれに何かを抱えて生きているし、それぞれの異なる問題をこうして文字記号を通じ、表象させるに至っています。それが我々の考える「書道」であるのだと。
例えば宮村弦は、点字を題材とすることで、そこに宿る文字としての美や、点字の文化構築の在り方に注目し、Ayako Someyaは、万物を表す元素記号を可視化した、その構造図一つ一つを文字に見立て、書道独特の滲みの中に浮かび上がらせる。小林真由香は禅の思想を現代語訳化するように作品として重厚な筆致で再構築し、日野公彦は日常の通勤路という狭い領域から見る世界のおかしみを軽い筆触で表した。矢野童観は、世の中に蔓延る上下関係のアンバランスさを、文字の大小やデフォルメを通じて揶揄し、Haru Yamaguchiは墨の滴りを重力に抗えない人間の矮小さと考えた。私、山本尚志は、ソシュール言語学以来の「モノと文字」との関係を、「モノにモノの名前を書くこと」で、捉え直す試みを続けている。
このように、ささやかながら我々一人一人の「記号と今」が確かにここにあり、日本独自の芸術、「書道」として間違いなく息づいているのです。
山本尚志
(現代アート書道の世界2【記号と今】参加アーティスト兼本展キュレーター)
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツビューイングルーム新宿)
http://ycassociates.co.jp
東京都新宿区西新宿4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731