EXHIBITION | TOKYO
玉山拓郎(Takuro Tamayama)
「Intervenes / Light and Table / Sound as Time / Hole」
<会期> 2025年3月15日(土)- 4月12日(土)
<会場> ANOMALY
<営業時間> 12:00-18:00 日月祝休
ANOMALYでは2025年3月15日(土)から2025年4月12日(土)まで、玉山拓郎(たまやま・たくろう)個展「Intervenes / Light and Table / Sound as Time / Hole」を開催いたします。
玉山拓郎(b.1990)は、日用品や家具といったファウンド・オブジェクトを用いたスカルプチャー、重力のズレを模倣した展示構成、映像や音響、そして鮮烈な照明(または無照明)によって絵画的空間を創出するなど、最小の異化によって空間体験そのものをダイナミックに変えるアーティストです。
2021年7月、ANOMALYにて開催された玉山初の大規模な個展「Anything will slip off / If cut diagonally」(斜めに切れば/何もかも滑り落ちる)は、空間構成を試験的にネット上で行ったプラン展示「When I was born when I was born」とパラレルに観ることができる展覧会でした。
現実世界のものの在り方や振る舞いを規定している「重力」を、最小の手つきですり替えた「Anything will slip off / If cut diagonally」は、展示会の構成要素が日常に見受けられるモノであるため観賞者に既視感を与えるものの、ニュートン力学に支配された世界では起こり得ない状況を、極めてアナログな手法で作り出した、巨頭の新人の到来を思わせる展覧会でした。
そこでは:巨大な照明体が18度の角度で斜めに落ち下がり/床が90度回転した格好で壁にあり/壁に置かれた(掛けられた?)プレートから滑り落ちるスパゲティ(皿とスパゲティの振る舞いはどちらが「正しい」のか)/傾いた水面を内包したグラス/三次元の形状を展開され平面的に壁に張り付いたテーブル/球面同士の接点を軸にゆっくり回転する球(接点の測れなさ)/引き伸ばされてノイズ化した音響/とても長い時間をかけて傾く水平線の映像、などが空間全体に広がり、空間感覚をずらしてみせました。
谷口吉生設計の豊田市美術館で現在開催中の玉山の個展「FLOOR」は、5つある展示室全体を貫くかたちで「巨大なただ一つの物体」の身を展示するという、前例のない挑戦的な展覧会です。これまで、光を完璧にコントロールしインスタレーションを行ってきた玉山が、豊田市美日間の展示室に降り注ぐ自然光を能動的に受け入れています。
その結果、光によって空間が時間軸を帯び、日の移ろいに応じて変化する光が、さまざまな様相で空間を照らし出します。作品と空間は、現実そのもののシェイプを超え、誰も同じ作品体験をすることはないかもしれません。個別の体験を可能にするこの展示は、かつて完璧に空間をコントロールしていた玉山が、その手を離すことで、自然、すなわち太陽の傾きや地球の自転、ひいては「時間」を獲得したように感じさせます。
この「FLOOR」に呼応するかたちで東京で開催される本展「Intervenes / Light and Table / Sound as Time / HoleInterior / Hole」は、一見すると未完成の展覧会を思わせます。
これは、アーティストが能動的に展覧会を構成するのではなく、周囲の環境、作品(≒モノ)、そして関わる人といった状況をそのまま取り入れることで、本展の完成を試みるというものです。主体的に空間を構成し、作品の配置を決めるという行為は、どのアーティストにも共通するもので、玉山もミリ単位の精度で空間を構成し作品の配置を決定してきましたが、今回はそのコントロールを放棄し、まったく逆のアプローチを採用します。
例えば、元倉庫のギャラリー空間を支えている梁や、残存するパイプといった要素。これらをあらかじめ与えられた環境として無視するのではなく、展覧会に関わりを持たせます。
また偶発的な操作(チャンスオペレーション)や他者の意思によって形作られることで、本展の展示が成立することになります。
これは、展示作業中の『ウェットな状態』から、展示が完成した後の『ドライな状態』へと移行する際に失われがちな、舞台裏のモノや関わる人々の多様な意思を、あえて顕在化させようという、玉山自身の経験が色濃く反映されたアプローチといえるでしょう。
ただし、本展で発表する作品そのものは、これまでと同じミリ単位の制度で制作されることから、他者性に満ちた空間との「奇妙なギャップ」が生まれるかもしれません。
なお今回同時開催する二つの個展は、それぞれが「個展」という形式に則った独自の空間を構成しつつ、玉山の呼びかけにより、お互いの作品がそれぞれの空間へ「介入」し合います。
環境や状況に敢えて左右される展示構成を試みる玉山と、もう一方の個展を担う永田康祐は、慣習的な展示形態を通じて社会との接続を試みます。それぞれの異なるアプローチが展覧会という形式の新たなオルタナティブを生み、化学変化を引き起こすことが期待されます。
在外研修でLAに旅立つ直前にオープンする玉山拓郎の個展です。どうぞご高覧ください。
ANOMALY(アノマリー)
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