EXHIBITION | TOKYO
毒山凡太朗(Bontaro Dokuyama)
「Public archive」
<会期> 2018年6月30日(土)- 7月14日(土)
<会場> Aoyama Meguro
<営業時間> 12:00-19:00(日18:00まで)火水休
この度、毒山凡太朗(どくやま・ぼんたろう/ b.1984/ fukushima)の最新プロジェクトを弊廊での個展として開催致しますのでご案内差し上げます。
この計画で毒山はパブリックアート(公共彫刻)は商用で無ければ、それを基に複製が可能(つまりより多くの人々に認知してもらうために)である特性に着目しました。
今回毒山はソウル市内に設置されている公共彫刻からスキャンデータを作成し、これを無料配布し、ソーシャルメディアを通じてパブリックに開放出来るものかを試みます。
過去がどうであったかに向き合い、過去が今どう記録されているのか(無かったことになっているのか)に向き合い、それを乗り越えて行くこと無くして、未来が切り開かれるはずは無いでしょう。
これが私達が経てきた世界であり、誤魔化しの利かない事実であり、隠し切れない現実であるからです。
この企画をあらゆる世代と人種、信条をお持ちのどなたさまにもご参加いただけます様に、謹んでお待ち申し上げます。
英訳:三宅里奈、スチュアート・ムンロ
協力:青空耳
Public Archive
2017年冬。ソウル市の日本大使館前には支柱に透明なビニールシートを被せただけの不法テントが建っていた。
どこかで聞いたようなテントの中には、ちょうどお昼ご飯を食べようとしていた休学中の女子大生と、滑舌の悪い男子高校生が座っていた。声を掛けるとゆっくり表へ出てきて、しばらく立ち話をした後、そのテントの中へ迎え入れてくれた。彼らは24時間体制で【作品名:平和の少女像(通称:慰安婦像)】を守っているという。
1992年から日本大使館前では「水曜デモ」と呼ばれる「日本軍 慰安婦問題 解決行動」が毎週水曜に行われ、第1000回目の記念としてこの像は建てられた。1991年、1人の女性が戦時中の日本軍 慰安婦被害者であると初告白した事から、いわゆる「慰安婦問題」は勃発し、現在も支援者と共に公式謝罪と法的保証を求めて日本政府へ訴えかけている。
1965年、日韓基本条約とそれに付随する日韓請求権協定により、過去の条約や協定の無効性と戦中の問題は完全かつ最終的な解決、となったはずだった。しかし、慰安婦に関する記述がないことや、資料や証拠となる証言・記録が錯綜した事、家父長制などの韓国の古い風習の影響からか当事者の告白が条約以降になってしまった事などから、韓国側はこの問題は解決していないと主張し、今でも解釈上の争いが続いている。
2011年12月、日本大使館前での最初の慰安婦像設置を受け、日本政府は改めて慰安婦問題解決に向けた日韓合意を取り交わした。しかし2017年、韓国政府と日本政府の日韓合意への解釈の違いから、韓国政府は合意を認めた上でこれを無視し履行しない方針を掲げた。
一方、日韓合意への火種となった慰安婦像を不法設置した韓国の市民団体側は「戦争の痛みと慰安婦問題を記憶し、平和を願う意が込められている」と設置の正当性を主張している。だが、日本政府が問題視するのは日本大使館前に設置したこと。これはウィーン条約第22条第2項※1に抵触していると主張し、かつ日本に対するメッセージと捉え、韓国側への即時撤去を申し入れている。
初めての銅像設置から6年が過ぎた2017年、撤去を求める日本政府の思いとは裏腹に慰安婦像は2017年ソウル市鍾路(チョンノ)区の【公共造形物第1号】※2に認定された。当初不法設置とされた銅像は、区のお墨付き公共造形物(パブリックアート)となり、撤去困難な区のパーマネントコレクションとなったのだ。
設置場所を巡って問題視する日本政府。更にその反応に答えるように韓国・ソウルから始まった慰安婦像の設置はアメリカ・サンフランシスコまで広がった。
ソウル市での最初の慰安婦像設置前、この記念としての像は銅像ではなく石に文字を刻んだ石碑にする予定だったという。しかし日本政府からの圧力により石碑の設置は困難となった。そこで作者は市民団体側に文字だけを刻んだ石碑ではなく、より慰安婦の被害を強調できる彫像にするのはどうか?と提案したという。(以下抜粋)「そうすれば、日本に謝罪と反省をより強く求めることができる」※3「少女像は数十年間胸の中に隠していた恨みを取り出して、日本の蛮行を責める慰安婦被害者の勇気を尊重するという意味で作った」※4と語っている。
平和の(為の)少女像を市民団体の為に制作するアーティスト。はたまたその像を社会活動の為に利用する市民団体。そしてそれを連日放送するメディア。さらに銅像設置の度に右往左往する日韓両政府。アートの領域を超えた力を持った彫像【平和の少女像】、そのパワーとは一体何なのか。
そこで本展覧会では【平和の少女像(慰安婦像)】を取り巻く諸問題(設置場所の問題、恒久設置された銅像の永久性と唯一性、複製と様々なバージョンによって増殖する銅像、パブリックにおける著作物)と、モニュメント(銅像)の記録としての機能に着目し、事実改ざんと隠蔽が繰り返される時代によりリアリィティのある「事実」を記録するため、客観性の保たれた目撃者や証言者とともに「今」の時代のアウラを記録したいと思う。
Aoyama Meguro(青山目黒)
http://aoyamameguro.com/
東京都目黒区上目黒2-30-6 保井ビル1F
tel:03-3711-4099