EXHIBITION | TOKYO
樫木知子(Tomoko Kashiki)
<会期> 2016年9月24日(土)- 11月19日(土)
<会場> OTA FINE ARTS
<営業時間> 11:00-19:00 日月祝休
オオタファインアーツでは、金沢21世紀美術館での個展『アペルト05 樫木知子 〜Daydream〜』にあわせ、近作による樫木知子展を開催いたします。
樫木の描く人物像は、部屋や庭といった密閉的な空間に配置され、人とにじみ出る存在感を絵画表面に閉じ込めています。作品は主にアクリルで描かれ、描いた画布の上をサンダーで削り、再び描くというプロセスを経て、滑らかな絵画表面と幾重にも重なる色相の背景を獲得しており、一見日本画と見まがうような平滑なテクスチュアと流麗な描線から生み出されるスタイルが見受けられます。
本展でもそのスタイルは一貫して変わりませんが、怖さと美しさが表裏一体となった独特の世界観はさらに深められています。作家の近年の作品は、様々なテクスチャーのおり重なりの中で、色彩がより力強く鮮やかになってきています。さらに、その絵画空間にはおぼろげな「ねじれ」が存在しているために、そうした力強さは一方向的にではなく、拡散的に伝達します。また、彼女が「自分の周りのすべてを作り上げることに専心するあまり自分の体が文字通り溶けてしまう」あるいは「風景の中へ蒸発する」と言及するように、作品の多くには人物が描かれていながら、人物と環境の境界は物質的にどこか曖昧で、透明です。そのため彼女がしばしば作品内に表現する「風」とともに、多くの匿名の記憶と風景が、そのような幽霊的な身体を通り抜けていく感覚を鑑賞は受けることになります。そのとき、わたしたちの記憶でさえも、彼女の作品に共通して見られる執拗な「壁」のように、作品内へと織り込まれていくのかもしれません。そうした鑑賞体験のなかで、わたしたち自身のアイデンティティも溶け出して、作家の表現する世界、そして作家自身のアイデンティティと混ざり合い、一体化するのです。
その結果として、樫木の作品はさながら白昼夢のように鮮烈な印象を残す絵画となります。そこには、思い出せない遠い過去の記憶、あるいはまだ見ぬ未来が示されているのでしょうか。「私の作品は特別な意図を前提にしているわけではありませんから、解釈の彼方で年齢や性別や国籍を超え、限りなく多くの人を魅了することができればと思っています」と樫木が言うように、彼女の作品はそれぞれの出自に左右されることなく、溶け出すような白昼夢へと鑑賞者を誘うでしょう。作家の豊かな想像力による、軽やかで同時に濃密な絵画を本展でぜひご高覧ください。
OTA FINE ARTS(オオタファインアーツ)
https://www.otafinearts.com/ja/
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
tel:03-6447-1123