EXHIBITION | TOKYO
山本尚志(Hisashi Yamamoto)
「Naming The World」
<会期> 2024年2月13日(火)- 3月23日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
この度、Yumiko Chiba Associatesでは、書家・山本尚志の個展を開催します。
山本はこれまで、ある対象をあらわす図形や記号(文字絵=ピクトグラム)を書き、その傍らに、対象の名称を並置して書くという方法によって、現代書の世界で独自の領域を切り拓いてきました。
新作の書を展覧する今回の個展では、存在しないゲームや、個人的な(他者と共有することの困難な)感覚を書として表した作品が並びます。それは、これまで世界に存在しなかったものを「作られた文字」として示すことであり、また、それらを書という形式を通じてはじめて生成させるものと言えるかもしれません。
漢字の成り立ちの起源が文字絵にあったように、文字絵は、文字と絵が混然一体となった、プリミティブな記号であると言えます。つまり文字絵を書くことは、ある事象が記号として確立され、文字として洗練される以前のものを書として示すこととも言い換えられます。世界に存在しなかったものを書にするという今展の試みは、いまだ名付けられていない事象を命名し、そこに「作られた文字」を与えるという意味で、これまでの制作を理論的に引き継ぎながら、そこに新たな道筋を付け加えるものです。書や文字の起源に潜るような、山本尚志の新作個展をぜひご覧下さい。
ステートメント
我々人間は、常に何かに囲まれて暮らしている。
それは我々を取り巻く自然であり、街中の風景であり、頭の中にある空想だ。
私はそれらに名前をつける。
それは、事物本来の名前を表す場合もあるだろうし、そうでないこともある。
そして、まだ誰も触れていないものに、勝手な名前をつけることも。
我々が人に何かを伝えようとするとき、人の認識が、自分のそれと「ズレ」を生じる場合がある。
実は、私はそのズレを楽しんでいるのだ。
その人が本来思っていたものと違った何かを、その人が発見するために、ちょっとした「工夫」をしている。
本展は、書の展覧会だが、よく見ると水墨画の画讃よろしく、絵記号の中、あるいは傍らに何かが書いてある。
そこに先程の「工夫」がある。
作品「目と目と光」は、幼い頃にすれ違ったクルマのライトによる「幻惑」を当時の記憶のまま表したもので、「リバーゲート」は生まれ故郷の広島市にある、災害を救った太田川の二つの水門を祈りとともに示した。
いくつかの「ゲーム」のシリーズは、この世にない空想のゲームを、さも当たり前のように書いた。自分自身がそう「名づけること」によって。
そこに書かれる文字は、書かれたその瞬間に生まれた言葉だ。
禅の公案のように「これはなんぞや?」と問われ、「これは〜でございます」とやったように、私も自分自身に問いかける。
「お前はいったいなぜ、そして何を書くのか」と。
それが書の正体だ。当たり障りのない立派な言葉を書くのではなく、つい、クスリと笑ってしますような、
拍子抜けが生じるような、そんな書。
言葉の本質を問うアートとして、書は、そのままデュシャン以降のコンセプチュアルアートにもつながるだろう。
東洋の書とアートは、そんな「ひとつながりの中」にいる。
山本尚志(書家・現代アーティスト)
Yumiko Chiba Associates (ユミコチバアソシエイツ)
http://ycassociates.co.jp/
東京都港区六本木6-4-1 六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ 3F
tel:03-6276-6731