EXHIBITION | TOKYO
名知聡子(Satoko Nachi)
「生活」
<会期> 2025年1月18日(土)- 2月8日(土)
<会場> TOMIO KOYAMA GALLERY Tennoz
<営業時間> 11:00-18:00 日月祝休
この度小山登美夫ギャラリー天王洲では、名知聡子展「生活」を開催いたします。
本展は、作家にとって弊廊における9年ぶり4回目の個展となり、大きく変化をとげた新作のペインティング、ドローイング作品を発表します。
【名知聡子と作品について
-他者から自身へ 描く目的、想いを伝える対象の変化-】
名知は、2010年初個展などの活動初期、若い時ならではの恋の幸福感と痛みを、精緻な描写力で「自画像」として大画面に昇華させていました。失恋の感情、心の揺れ、諦め、情熱、自分を知って欲しい、伝えたい、特別な人との関係や想いをまるでラブレターのように作品に表していました。
それが2016年大原美術館のアーティストインレジデンスプロジェクト「ARCO」において、豊かな自然に触発され、その異性の存在がなくても純粋に絵を描く楽しさに気づきます。絵の対象がより根源的な存在となり、爽やかな光に満ちた叢に映る人影として作品に現わしたのです。
2019年パリのレジデンス政策では、元々好きだった原色を用いるようになります。いままで自分の好みを極力抑え、伝えたい人に伝わるよう色も構図もサイズも選んできた名知が、自分の好みに正直になりました。
そして今回の新作は、2022年に結婚を機に移住した後に描かれました。当初は見知らぬ土地に戸惑い、自分だけではコントロールできない人生、生活、時間と、その変化に上手く対応できなかった、窮屈な感情が現れています。
その頃名知は、新しいものを手にしたら以前の記憶がこぼれていくようで過去に執着し出したと言います。まだ鮮明なうちにこの気持ちを描きたい。制作だけは自分の思うままにできると、日中は油彩、夜はペーパーワークを、苛立ちや焦りから逃れ気持ちを発散するように描き、作品はまるで日々の日記のようになっていきました。
【本展および新作について
-身体と絵の具が通じていく感覚 人、生活、時間と記憶の中で知る新たな自己存在-】
————————————————
パレットに絵の具を出してこねている時、ふとそれが自分の腕から削いだものをこねてる感覚になりました。
できた絵の具を画面にのせる時も、まだ温度のある生々しいものに感じました。
違うと思って拭き取ったりナイフで掻いたり、テレピンに溶けていくのは私の一部に思えました。
透明な爪が肉片や血液で色づいてく。
絵の具が足りなくなったら今度は反対の腕から削ぎ落とします。
こんなことを続けていたらいつか私は消えてしまうなと、冗談みたいなことを考えました。
けど、こうして私の絵はできていくのかと、妙に納得したんです。
名知 聡子
————————————————
今回の新作において、名知が自分を描く方法はもはや自画像ではなくなりました。生活に向き合い、過去を忘れることや両親の甥など人は変化することへの気づきが作品に影響を与えました。
新作「私はそれを受け入れることができない」は、夫と阿蘇山の朝日を見に行き、その雄大さや物言わず在る姿への感動と、それでもまだ感じる新しいものへの抵抗を、最後に山をひっくり返して表しています。そして自画像でなくとも、結局画面には自分が現れていることに驚き、次なる表現の可能性が広がる作品となっています。
また近年の制作においては、絵の具という物質と身体がリンクしたような不思議な感覚を覚えたといい、その情景を描いた作品「画家の生活」、そして今までの人生の節目、大切なことの記憶とセットでいつもお酒が思い出されることから、その記憶としての絵となったのが「期待の一杯」です。
新作の発端は辛い状況からでも、特にペーパーワークの 制作は、その時の自分の感情を発露できるご褒美のような時間だったと名知は述べています。
人と生活と時間と記憶。他者と生活を共有するからこそ自分と対峙するようになり、他者に向けての作品から、自分のための制作へと変化した名知の最新の世界観。ぜひご覧にお越しください。
TOMIO KOYAMA GALLERY Tennoz(小山登美夫ギャラリー天王洲)
http://tomiokoyamagallery.com/
東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex Ⅰ 4F
tel:03-6459-4030