EXHIBITION | TOKYO
吉田志穂(Shiho Yoshida)
「ある石の話」
<会期> 2018年9月29日(土)- 11月2日(金)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2018 年 9 月 29 日(土)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、吉田志穂個展“Quarry / ある石の話”を開催いたします。
Google で画像検索をし、モニター上にモチーフとなる被写体を探す。出てきた検索結果からイメージを選んだ後、最初の撮影が行われる。 その後、そのイメージが実際に撮影された現地に足を運び、そこでまた撮影をする。 吉田志穂は、これまでこうした方法でデジタルとアナログの間を行ったり来たりしながら対象を求め、制作を続けてきました。 撮影されたイメージは、等価にプリントされていきます。吉田にとって、それがデジタルかアナログか、リアルであるかヴァーチャルである のかといったことは大した問題ではありません。出てきたイメージをプリントし、そのイメージの本質について考える時間が制作における大 切なプロセスであり、そして最も重要なことはそれらのイメージが実際の空間でどう見せられるのかということなのです。 展示によってそれぞれのイメージは物質化され、ひとつの空間へと変わっていきます。その時、イメージは見るものから体感するものへと変 わります。そして、そこは到達した場所であると同時に、そこからどこかにつながる一つの風景でもあります。
今回吉田が選んだのは、ある「石」を巡る物語です。「石」は人間の生命のタイムスケールで測ることはできません。悠久とした長い時間を経 るものとして、半永久的に不変の存在とされてきました。また「石」は、中国ではセキと読み、日本ではコクと読む、私たちの生活の中で質量 の単位を表すものでもありました。
そうした「石」が持つ時間と物量が、古今東西様々な物語を生んできました。
吉田が探してきたイメージが、語られてきた物語の断片なのか、新たな物語を作るのか、時空を超えて現れてくるものを共にご覧いただければと思います。
■作家ステートメント
インターネットなどのメディアにより、その恩恵を受けていると同時に何もかもが簡単にわかってしまう(わかった気にさせられてしまう)ように感じる。謎が謎のままであることや不確定なものが許容されにくくなっているように思う。どこか閉塞感のようなものを感じている人も少なくないだろう。
そんな現状の中で、事実や史実が明確にわからないものを探した。
数年前にこの石のことを知った。オカルトやオーパーツを紹介する記事だったと思う。
何のために作られたのか、作られた時期すらも明確にはわからない人工の巨石、現代の技術でも同じものを作るのが困難らしい。石の形そのものや謎の多さにとても興味を惹かれた。
実際に行って見た石は、一目で全貌がわからないほどに大きく、囲むように社が立っていた。
距離をとって形を見ることもできず、インターネット上で見ていた画像とはまるで違うものに思える。参考に見ていた過去に描かれたスケッチや文献から想像していた場所ともまるで違っていた。
調べてみると 1820 年代に日本に渡来したシーボルト(ドイツの医師・博物学者)は石を3枚のスケッチに残していた。また 1970 年代には松本清張が小説「火の路」に石のことを取り上げていた。
石のある街に住む石工は当時の作業風景を想像した話を聞かせてくれた。
「石を掘っていた当時、山からは年々も絶えず煙が上がっていたと思うんです。石を掘るための道具に火を入れて打ち直す必要があったから、私はずっとその場所がどこなのかと考えています。」
最近ここではと思っていた通りの場所から熱で変色した痕跡が見つかったらしい様々な時代にこの石に魅了された人達が、それぞれの形で残すことを試みている。
近くの博物館では、周囲で出土した一見すると何かわからないような破片から元の形を修復する作業を見学することができた。破片は膨大な数が貯蔵されている。選定し、元の形を想定し、繋ぎ合せ、足りない部分を想像で埋めていくという作業が黙々と行われていた。それは例えば壺になり、皿の形になった。それは本来の形では無かったかもしれないけれど。
スケッチ、小説、石工の話、採掘場の石の欠片、ネット上の画像や考察、時代や場所を超えて石に対する様々な見解が生まれた。しかし、明確な答えは今もなお判明せず、残されたものたちによってさらに謎が深められているようも思える。
ただそこに在るというだけの石に、それぞれの方法で補われた新しい意味たちは確実に残っていっている。
私は私のやり方で、写真を使って、この石を残すことにした。
吉田 志穂
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツ)
http://www.ycassociates.co.jp
東京都新宿区西新宿4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731