EXHIBITION | TOKYO
北井一夫(Kazuo Kitai)
「フナバシストーリー」
<会期> 2018年5月25日(金)- 6月23日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2018 年 5 月 25 日(金)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、北井一夫個展「フナバシストーリー」 を開催いたします。
1960 年代、北井は横須賀の原子力潜水艦寄港反対闘争をテーマにした「抵抗」や、大学民主化を要求する学生運動を撮影した「過激派・バリケード」等の刺激的な作品を制作、70 年代に入ると、日本の経済成長と共に急速に失われていく農村社会の営みを捉えたシリーズ「村へ」、「いつか見た風景」を発表する等、その眼差しは常に時代と向き合ってきました。
そして 80 年代、バブルに向かいつつあった日本社会の中で、北井の関心は団地や新興住宅地で暮らす人々の生活に移ります。
「フナバシストーリー」は、1980 年代に人口が急増した千葉県船橋市の行政から北井が“生活する人たちと町の写真を撮ってほしい”と依頼されたことから始まりました。
当時、船橋市は、東京郊外のベットタウンとして団地や新興住宅地の建設が進み、住民の 8 割は新住民(大都市近郊に移住をした住民)であると言われていました。新婚で入居し、子育てをし、子供が大きくなると手狭になり引っ越しをしていく。同じ 建物が均等かつ無機質に並ぶ区画整理された集合住宅の中で淡々と繰り返されるこうしたサイクルは、より大きな成長を促し ていきます。しかしながら、それまで自分たちが置かれていた速度とは違う速さで物事が動いていく様に、人々は表面的には発展を喜びながらも戸惑いを覚えていたのではないでしょうか。北井は、その中で営まれる個々の生活に目を向け、丹念に取材と撮影を重ね、その場所や人々の持つ明るい光を切り出しました。
生活の場は、村が「暗」であったのに対して、団地は大きな窓から室内にたくさん入る「明」であった。物や人の存在感も村が「重」であったのに対して、団地は軽くて宙に浮いたような存在感で、すべてが反対側を向いた在りようを示しているのだった。
*北井一夫「写真家の記憶の抽斗」より抜粋
北井本人が語るように、変遷していく時代の流れを敏感に感じ取り、そしてそれを実直且つ丁寧に撮影することで垣間見ら
れる日常の光景こそが、「フナバシストーリー」なのです。
尚、展覧会のオープニングに合わせ、写真家の鷹野隆大氏をゲストに迎えトークイベントを開催致します。この機会に是非ご参加ください。
■作家コメント
久しぶりに「フナバシストーリー」のプリントを抽斗から出してみた。ずいぶん長い時間が過ぎたような気がした。1985年頃の千葉県船橋市の団地に暮らす人たちを撮影した写真で、その人たちの生活は変わらずに続いているのだろうか。写真を撮ってプリントした時から、時代の節目を何回も経ていても写された時の私が今もここにある、とプリントは語りかけてきた。
当時写真を撮らせてくれた二人の女性に会った。二人ともそれぞれに 30 年という年月を感じさせた。撮影した頃の話を30 分ほどした。別れた後に、彼女らのことは今の顔ではなく写真の中の表情がリアルに思い浮かんだ。なぜだろうか、ふとそう感じた。
30年前に写真展や写真集で見てくれている人たちにもう一度見てほしくて今回の展示をすることにした。
北井 一夫
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツ)
http://www.ycassociates.co.jp
東京都新宿区西新宿4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731