EXHIBITION | TOKYO
冨井大裕(Motohiro Tomii)
「像を結ぶ」
<会期> 2017年2月1日(水)- 3月11日(土)
<会場> Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
2017 年2 月1 日(水)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、冨井大裕の個展「像を結ぶ」を開催しております。
冨井派、レディメイド(=既成品)を作品の素材として「彫刻」の概念を成立させる試みをしてきました。素材そのものが備えている機能、条件、存在定義を制作という行為によって新しいものへと変化させ、全く異なる存在として我々の眼前に提示します。それは、素材から全ての意味をはぎ取ると同時に、素材の物理的な要素のみで作品を完成させることによって、物語性にもイメージ性にも形にも頼ることのない、真の意味で自立した作品を作ろうとする行為でもあるのです。長い歴史の中で「彫刻」と言われてきた従来のイメージから離れた方法で、素材にこだわることなく彫刻のあらたな可能性を探求する姿勢は、twitterにて毎日更新される「今日の彫刻」シリーズや、複数の素材を結合させた彫刻のシリーズ、印刷物を用いた代表的な作品にも表れています。
冨井は、2015年度に、アメリカ/ニューヨークに文化庁在外派遣研修員として滞在しました。1年に渡った滞在は、「彫刻とは何か」という冨井が持ち続けた問いかけの根幹を、より揺さぶることになりました。
本展では、帰国後初の個展として、ニューヨークで制作した新作を展示します。より確信的になった素材へのアプローチによって、その表現はさらに構造的なものへと発展しています。
進化を続ける冨井の新作を、是非ともご高覧ください。
尚、展覧会に合わせ、星野太 氏(美学・表象文化論/金沢美術工芸大学)を招いて、作家とのトークイベントを予定しております。合わせてご案内いたします。
■作家ステートメント
この2年、放っておくと溜まってしまう物を作品にしている。紙袋、ビニール袋、封筒、なんとなく気になって手に入れた便箋、購入した商品のパッケージなど。「こういうこともありかしら」という直感から始めたことであった。私は、それまで素材を選ぶことにかけてはかなりの慎重派で、その後の素材との付き合いも厳密な方であった。言ってみれば「お堅い作家」であった。「堅さ」は私の性情によるところ大きいので簡単に変えられるものではないが、このまま「お堅いやり方」にしがみつく必要性も現在はない。そんな時、せこいことは考えず直感に従いやってみるのもよかろうということで紙袋などを使い始めたのである。以下は、そんな「制作」から考えたこと。
物を本来の用途から切り離し、作品の素材として扱うことは特別なことではない。美術史におけるアッサンブラージュやコラージュ、絵画教室やテレビ番組における工作。物は、表現に関する多くの時と場面において「使われて当然」の体で素材という既得権を主張している。私は、表現の場において物が発する「素材の有効範囲」からなるべく離れたところで物を作品にしたいと思った。このことが、ものと関わる表現において相当の矛盾をはらんでいることは承知の上だ。
物にへばりついている役割やイメージ(果たすべき目的や期待される使命)とそれらを表明する外観ーーこれを仮に「Aな諸々」と呼ぼうーーを変形、除去することなく別の形ーー「Bな諸々」ーーに仕立て上げることで、別の局面ーー「Cな諸々」ーーに移行すること。AとBが並行して滲んでいるCな諸々。わからない存在でありながら、存在していることが何となく許される何かへ。
そんな何かへ物を仕向けることを目論みつつ物に対処し続ける。これを制作と呼んでもいいのだが、ここではひとまず「像を結ぶ」と呼んでおきたい。
以上。美術の現場においては既に使い古された口上かもしれないが、まだここに面白さがある。ならばやるべきだと、私の直感が告げている。
2016年11月 冨井大裕
Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(ユミコチバアソシエイツ)
http://www.ycassociates.co.jp/
東京都新宿区西新宿 4-32-6 パークグレース新宿#206
tel:03-6276-6731