EXHIBITION | TOKYO
田名網敬一(Keiichi Tanaami)
「貘の札」
<会期> 2017年6月24日(土)- 8月5日(土)
<会場> NANZUKA
<営業時間> 12:00-19:00 日月祝休
この度、NANZUKAは、当ギャラリーでは約3年ぶりとなる田名網敬一の新作個展「貘の札」を開催いたします。
田名網敬一は、1936年東京に生まれ、武蔵野美術大学を卒業。1960年代より、グラフィックデザイナーとして、映像作家として、そしてアーティストとして、メディアやジャンルに捕われず、むしろその境界を積極的に横断して創作活動を続けてきた孤高のアーティストです。
近年の主要な展覧会としては、個展「No More War」(Schinkel Pavillon、ベルリン、2012)、個展「KILLER JOE’S (1965-1975)」(Fondation Speerstra、スイス、2013)、グループ展「Ausweitung der Kampfzone: Die Sammlung 1968 – 2000」(ベルリン新国立美術館、2013)の他、ポップアートの大回顧展「International Pop」(Walker Art Center、Dallas Museum of Art、Philadelphia Museum of Art 、アメリカ、2015-2016)及び「The World Goes Pop」(Tate Modern、ロンドン、2015)、「Oliver Payne and Keiichi Tanaami」(Hammer Museum、ロサンゼルス、2017)など多数。また、MoMA(アメリカ)、Walker Art Center(アメリカ)、The Art Institute of Chicago(アメリカ)、M+ Museum for Visual Culture(香港)、National Portrait Gallery(アメリカ)、Nationalgalerie im Hamburger Bahnhof (ドイツ)といった世界中の著名美術館が、近年新たに田名網作品の収蔵をしており、その国際的な評価は日々高まっています。
田名網は近年、自身の記憶や夢を原風景にして、自身の80年以上もの歴史を記したいわば”曼荼羅図”の制作に取り組んでいます。一見すると奇怪でありながらもポップな妖怪画のように見える田名網の近作ですが、そこに描かれているのは田名網の実体験に基づく様々な記憶です。アメリカンコミックを引用したアメリカの爆撃機、その中で光を放つ擬人化した爆弾などは、田名網が幼少期に実際に見た戦争の記憶に深く関係をしています。新作の大作「彼岸の空間と此岸の空間」に登場する「鶏」のイメージは、田名網が1975年に制作した映像作品「Crayon Angel」の中にも既に登場しているように、機銃掃射のために低空へと急降下をする戦闘機のメタファーです。同様に、骸骨姿の様々なモンスターたちは、戦争で傷ついた人々であり、恐れを知らぬ私たち自身を暗示します。こうした創作行為は、しばしば田名網の夢の中で起こります。田名網は1978年より夢日記を記しており、その後記録された夢は様々な作品に登場するようになります。例えば、動物的な生命を宿したかのように描かれている松は、田名網が44歳の時に結核を患い死の境を彷徨った時に見た幻覚を記録した絵日記に由来しています。田名網の作品には、頻繁に裸の女性が登場しますが、夢日記の中で性的なモチーフはしばしば戦争の恐怖体験と同時並列的に恐怖の対象として登場しています。水も田名網の夢によく出てくるテーマであり、画中に描かれる波との関係性を想起させます。
今回の新作では、こうした記憶や夢と並行して、キリコやウォーホル、リキテンシュタイン、若冲、エッシャーといった田名網が敬愛するアーティストたちの作品も随所に登場します。こうした引用は、「死」への恐怖やトラウマ体験をむしろエネルギーへと変換することで今なお進化を続ける田名網敬一にとって、プラスの効能として自然な成り行きなのかもしれません。田名網は、これらの作品について自身が「死後に住む世界」だと、まるで冗談とも思える解説をしていますが、ここに描かれているものは、ポップ、サイケデリック、シュールレアリスムなどといった美術のあらゆる類型を超えて行こうとする孤高の領域なのです。
本展では、横3mの大作の新作2点を含む新作ペインティング約10点の他、昨年NYのSikkema Jenkins Galleryでの個展で初めて発表されて以後、アカデミー賞公認のセントルイス国際映画祭や審査員特別賞を受賞したGeneva International Animation Film Festival、オーバーハウゼン国際短編映画祭、サンダンス国際映画祭など様々な映画祭で上映されている新作のアニメーション作品「笑う蜘蛛」を展示上映する予定です。
本展に寄せて、6月24日(土)18:00−20:00にアーティストを囲んでオープニングレセプションを開催致します。また、本展はNANZUKA移転後初の展覧会となります。 皆様のご来場を、心よりお待ち申し上げております。
本展覧会に合わせて、田名網の近作イメージを収録した2冊のアートブックも出版されます。1冊目の『貘の札』は、「作品としての本」という田名網が1967年に自家出版した『田名網敬一の肖像』、及び1969年出版の『巨像未来図間』の2冊に続くコンセプトを継承した本で、宇川直宏アートディレクションによる400Pの豪華本となり、別に100部限定のブロンズ製のケース付き冊子も販売されます。2冊目の『Psychedelic Death Pop』は、40Pの大判のペーパーブックで、特別付録として大型ステッカー2点を収録しました。
NANZUKA(ナンズカ)
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