柴田敏雄(1949年生まれ)は、ダムや土木現場、コンクリート壁などの人工物とその周囲の自然物を独自の視点で捉えた写真作品で知られ、国内外で数多くの作品を発表してきました。
東京芸術大学(同大学院)で油画を学んだ後に映像メディアにも興味を向け、その後ベルギーへ留学(75~79年)。それを機に写真での表現に転向したという経歴を持つ写真作家でもあります。
92年に木村伊兵衛写真賞、09年に東川賞国内作家賞を受賞。ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ポンピドー・センターなど国外主要美術館にも多数の作品がコレクションされています。
鎌倉画廊での個展としては3回目となる今展は、展示作品の全てをポラロイド社の「Type55」で撮影されたもので構成致します。
この「Type55」は、唯一ネガを取ることができるポラロイドカメラ用のフィルムで、作家がベルギーで写真を撮り始めた70年代から20数年に渡り撮影に使用してきましたが、国内ではこれまでほとんど発表されることがありませんでした。
撮影後にカメラから引き出し、表面の紙を剥離しますが、その引き剥がし方によって写真のエッジには様々な様相が現れます。作家はこのポラロイド特有の縁を作品の一部としてあえて残すことでトリミングされた作品とは違う表情を作り出しています。
今展では、2000年~2004年に日本国内とアメリカで撮影された作品を選定。
作家の全作品の1割程度という縦構図の作品がメインとなる32x40インチの作品5点を中心に、3種のサイズで展開する完全未発表作品約20点を展示致します。
研ぎ澄まされた視点で瞬時に切り取られた、人工物と自然とが織り成す奇跡的ともいえる均衡――そしてポラロイドフィルムが見せる、柴田作品の中でも特異な表情。
この機会にぜひご高覧下さい。
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