サラリーマンが美術作品をコレクションするなどなかなかできることではありません。
山本冬彦さんは30年間で約1300点の作品を蒐集してきました。しかし、特筆すべきはコレクター歴や購入点数だけではありません。自らを「アートのソムリエ」と称し、画廊の巡り方や美術品購入のアドバイス、美術をより身近なものにするための普及活動を精力的に行い、一般の方々への美術愛好の扉を開いてきました。
また、若い作家たちへは作品を購入することが最高の支援という考えのもと作家の育成にも尽力することを「個人メセナ」活動として実践して来ました。
佐藤美術館も美大の学生に奨学金を支給したり、若い作家のサポートを目的とし約20年活動をしてきましたので、山本さんとの活動の接点も多く、ある意味同士のような存在と言っても過言ではありません。
岡村桂三郎 「龍」1993年
本展は、山本冬彦氏がその時代その時代の目線でコレクションした作品のなかから厳選した約160点の作品により単なる蒐集を超えた活動を感じ、ひいては美術の魅力の発見に繋げていただこうとするものです。
今回の特色はコレクターとして同世代(前後10歳)の作家を中心に購入してきた「コレクターの眼」と、若い社会人にお薦めの若手作家紹介のために購入してきた「アートソムリエの眼」の二つの視点から展示構成をします。
近年、コレクターが主役の展覧会が美術館でも画廊でも数多く開催されています。しかしその多くは今流行の狭義の「現代美術」が中心であるような気がしてなりません。山本さんは日本画・油彩・版画などジャンルを問わず現在活躍している同時代の作家をすべて広義の「現代美術」と捉え幅広い作品を蒐集してきました。
一人のサラリーマンが等身大の目線で蒐集してきた作品に触れて頂くことにより一人でも多くの方々が自分の好みに従って幅広くアートを楽しみ、身近に感じてもらえるならこれほど素晴らしいことはないと思うのです。
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