《にっぽんの台所》、《にっぽんの通勤快速》、《公衆便女》など、現代美術家・束芋(たばいも)は、日本の現代社会の断片的風景を、独特の感性で描き出し、そのアニメーション映像を空間的に構成するインスタレーションで世界的評価を受けてきました。
デビュー間もない2001年には、第1回横浜トリエンナーレに最年少で出品したことでも話題になりました。デビューから10年、束芋は、再びこの横浜で、5点の大型映像インスタレーションを発表します。本展は出品作の全てが新作という、かつてない規模の個展です。
束芋《団地層》(イメージ)2009年、映像インスタレーション
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
Tabaimo, Apartment Strata (image), 2009, Video Installation,
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
30代半ばを迎える束芋が、本展でテーマにするのは、自らの世代感と世界観そのものです。近年の作品で束芋は、現代の典型的イメージをつなぎ合わせるような作風から、指、髪の毛、内臓などをモチーフとする、より内的な作品へと表現の幅を拡げてきました。本展で束芋は、そこからさらに展開し、自分を取り巻く世界、昭和を知る最後の世代である同世代の感覚、異なる時代に生きた同年代の人々を見つめ直し、新たな作品世界を切り開いていきます。
本展では、そうした束芋自身をめぐる世界が、集合住宅という形で象徴されます。同じ間取りの部屋に、全く異なる生活が連なっている集合住宅。そこに包丁をいれるように、束芋は集合住宅の「断面」を切り出し、現在と過去が渾然一体となった様々な人生をえぐり出していきます。続く作品群では、人や自然といった生ある物の「断面」へと踏み込んでいき、より深遠な世界像を結んでいきます。
束芋《ちぎれちぎれ》(イメージ)2009年、映像インスタレーション
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
Tabaimo, fragment (image), 2009, Video Installation,
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
束芋の作品世界をより多角的にご紹介する会期中のイベントも盛りだくさんです。トーク・イベントに加えて、束芋と同世代のダンサー、ミュージシャン、劇団など、クリエイターたちとのコラボレーションによるダンス・ライブや演劇公演を開催します。
アーティスト活動10年を迎える束芋が作り上げる、世界の「断面」をお楽しみください。
束芋《団断》(イメージ)2009年、映像インスタレーション
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
Tabaimo, danDAN (image), 2009, Video Installation,
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi
<束芋アーティスト・トーク>
作家自身が、展覧会のテーマや作品制作の過程について語るトーク・イベント。
日時 12月13日(日曜)15時から16時30分まで(開場14時30分)
会場 横浜美術館レクチャーホール(定員240名・先着順・聴講無料)
<康本雅子×Tucker×束芋 ダンス・ライブ「油断髪」>
会場 横浜美術館グランドギャラリー
日時 12月25日(金曜)開場18時30分 開演19時30分
料金 演劇公演とのセット券 5,500円
※定員280名、全席自由。1ドリンク付き。開演前(18時30分から19時30分まで)に展覧会を鑑賞できます。
<演劇公演 WANDERING PARTY>
total eclipse -トータル・エクリプス-
1985年に社会を震撼させた豊田商事会長刺殺事件をめぐって、そこに居合わせた報道陣の実際の証言、刺殺された男の半生をモチーフに、現在と過去が交錯する時間軸で展開する舞台「トータル・エクリプス」。2008年に東京で上演された公演を、束芋の最新映像を導入に再演します。
作・演出 あごうさとし
出演 高杉 征司、金本 健吾、山本 麻貴、河合 宏友
酒井高陽(劇団M.O.P.) 信平エステベス 藤原大介(劇団飛び道具) 山口菜緒(関西カモフラージュドパーティー) 七井悠(京都ロマンポップ)
舞台監督 浜村 修司
美術 青木 勉
照明 池辺 茜
音響 小早川 保隆
制作 本郷 麻衣
演出助手 松永 理央 吉田 一弥
使用楽曲 ザッハトルテ(「お茶の間ヨーロッパ」と「貴方とワルツを踊りたい」より)
助成 アサヒビール芸術文化財団
会場 横浜美術館レクチャーホール
公演日時 A公演:1月16日(土曜)14時から
B公演:1月16日(土曜)18時30分から
C公演:1月17日(日曜)14時から
料金 前売券 3,000円
当日券 3,200円 ※残席がある場合のみ販売(当日10:00までに「最新のお知らせ」で告知します。)
演劇公演とのセット券 5,500円
全公演ポスト・トーク有り。トークの出演者と内容は各回とも異なります(束芋氏とあごうさとし氏は全ての回に出演します)。
<講演会>
「束芋の世界を横断する」
講師 逢坂恵理子(横浜美術館館長)
日時 1月30日(土曜)15時から16時30分まで(開場14時30分)
会場 横浜美術館レクチャーホール(定員240名・先着順・聴講無料)
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい三丁目4番1号
TEL:045-221-0300